研究課題
CKD患者、特に透析患者ではサルコペニアの有病率が高い。CKDで蓄積する代表的な尿毒素の一つである終末糖化産物(AGE)は、炎症を惹起しインスリン抵抗性やADMAの上昇、内皮障害に関与すること、健常高齢者ではサルコペニア/フレイルと関連する。そこで我々は、骨格筋に蓄積したAGEの、CKD関連サルコペニア/フレイルにおける詳細な役割を検討を行った。動物実験ではCKDモデルの腓腹筋にみられる形態学的異常、毛細血管数の減少、ミトコンドリア機能異常に対するAGEアプタマーの効果について検討を行った。維持血液透析患者では、フレイルを有する群でAGEが高値であり、Time up and goテストのスコアおよび身体活動強度とAGEも有意な相関を示した。5/6腎摘CKDモデルマウスでは、本観察期間においては筋量の低下はみられなかったが、筋線維へのAGEの蓄積、筋線維の大小不同など、サルコペニアに特徴的な筋の形態学的変化が観察され、内皮障害、毛細血管数の減少、ミトコンドリア機能異常もみられたが、これらはAGEを特異的に阻害するAGEアプタマーにより、完全に改善がみられた。以上から、AGEは内皮障害やミトコンドリア機能異常を介してCKDのサルコペニア/ フレイルの発症に関与する可能性が示唆され、これらの結果は論文として報告した(Sci Rep. 2020;10(1):17647.)。また興味深いことに腎不全モデルマウスの骨格筋においてマイオカインの1種であるIrisinの発現が低下していることが見いだされ、透析患者においてはIrisinの濃度が運動量や筋肉量と負の相関を示すこと、またその低下がABIや血管の石灰化など動脈硬化のサロゲートマーカーと密接に関連することも見出しており、現在、筋萎縮-心血管病連関機序としてのIrisin-内皮障害に着目し検討している。
2: おおむね順調に進展している
内皮障害因子であるAGEがサルコペニア/フレイルの発症進展に密接に関与するという可能性を見出しすでに論文報告を行った。またそこからさらに深堀りした研究および派生した新たな病態機序に関する検討も行っている。
今後はCKDのサルコペニア/フレイルにおける運動療法及びMyokineであるIrisinに着目し、その動態と治療目的としての可能性を探求していく予定である。
研究費を効率的に使用したため、残額が生じた。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
Scientific Reports
巻: 10 ページ: 1-12
10.1038/s41598-020-74673-x.