研究実績の概要 |
当科と関連病院における総腎生検数は1979年から2020年10月まで9595例で、単クローン性免疫グロブリン関連糸球体疾患(MIg)は38例あり、うちMIDDは21例 (LHCDD 8例、HCDD 5例、LCDD 8例)、PGNMID-MPGN型7例、PGNMID-LC型2例、MG-LC 7例であった。これらは報告例が少なく稀とされ、臨床データ、病理学的特徴、腎予後や生命予後の解析を行った。 LCDD患者では生検時GFRが低く尿中MIgsの検出率・多発性骨髄腫(MM)の発症率が高く、重度の尿細管間質病変や血管病変が特徴的であった。多くの症例はステロイドベースの治療を受け、LCDD, LHCDD, HCDD, MG-LC症例は近年ボルテゾミブを用いた治療が行われていた。腎生存率はLCDDがPGNMIDやMG-LCに比較し有意に低く、生命予後はMG-LCがHCDD, PGNMIDより有意に長かった。生検時のeGFR,尿中MIg検出率、MMの発症率、尿細管間質・血管病変の重症度、長期予後に疾患群間で有意差が見られた。 2.患者尿からのM蛋白の精製と構造解析 (1)稀な病型である結晶性円柱腎症患者尿からλ型M蛋白を精製し、N末端アミノ酸配列を同定した後、骨髄血からcDNAを調整し、このM蛋白の完全長cDNAをクローニングした。更に、尿から精製したλ型M蛋白を結晶化し、X線構造解析を行った。本腎症でのM蛋白の最初の立体構造解析例である。(2)尿中に多量のκ型M蛋白を認めながら腎障害の軽度な骨髄腫患者尿からM蛋白を精製し、N末端アミノ酸配列を同定した。次に、骨髄血からcDNAを調整し、このM蛋白の完全長cDNAをクローニングした。尿から精製したκ型M蛋白の至適結晶化条件を検討した。(3)稀な病型であるλ型LCDD患者1例の尿からλ型M蛋白を精製し、疎水性の高い特徴があることを明らかにした。
|