研究課題
研究代表者は以前、BTBR ob/obマウス(肥満・2型糖尿病モデルマウス)に18週間HIF-PH阻害薬を投与すると、アルブミン尿が減少し、糸球体上皮細胞と内皮細胞障害が軽減することを明らかにした。しかし、HIF-PH阻害薬には肥満および血糖・脂質代謝改善作用もあり、上記モデルではこれら代謝改善の影響と、腎臓におけるHIF活性化の影響を個別に検証することは困難だった。そのため、近位尿細管特異的にHIFを活性化したマウス(タモキシフェン誘導型近位尿細管特異的PHDノックアウトマウス)に糖尿病を発症させ、同様の腎症改善効果が得られるか検証する計画を立てた。上記マウスにストレプトゾトシンを用いて糖尿病を発症させると、血糖値は両群で同等だったが、野生型マウスではアルブミン尿が増加するのに対し、ノックアウトマウスではアルブミン尿が増加しないことが明らかになった。また、ノックアウトマウスでは糸球体肥大が抑制される傾向にあった。近位尿細管特異的PHDノックアウトマウスでは野生型マウスと比較して血圧が低下しており、アルブミン尿減少に寄与している可能性が示唆された。そのため、2022年度は近位尿細管におけるHIF活性化が血圧を変化させるメカニズムの解明を試みた。近位尿細管特異的PHDノックアウトマウスでは、血管拡張作用を有する生理活性物質が増加していることが判明したが、それが上記マウスにおける血圧低下に関与するという証明には至っていない。今後、血圧調節機構における近位尿細管HIFの役割について、検討を続ける予定である。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
Pharmacology & Therapeutics
巻: 239 ページ: 108272~108272
10.1016/j.pharmthera.2022.108272