研究課題
本研究の目的は、未診断の塩喪失性腎症に新しい責任遺伝子を発見し、その主要な病態メカニズムを解明することである。究極的には希少疾患の枠組みを超えた予防医学的応用展開を目標としている。申請書に記載した2種類の候補遺伝子の機能検証を行なっている。①CACNA1Hについてはノックアウト(KO)マウスの解析を通じて、KOでは腎臓におけるNCC(Gitelman症候群の病因となる塩輸送体)のタンパク発現がわずかに低下していることを見出した。CACNA1Hが塩出納に何らかの影響を及ぼしている可能性を考慮し、引き続きその病態メカニズム解明を目指す。②SQSTM1(p62)に関しては、CRISPR-Cas9システムを用いて内在性p62をknock downしたHEK293T cell linesを作成し、着目したC289Y変異を導入した変異p62ベクターを用いた強制発現系にて、変異p62は最終アウトプットであるNCCを正に制御するWNK4キナーゼタンパクの発現を有意に減少させることを確認した。病的意義を持つ可能性があり、引き続き機能検証を継続する予定である。なお個別の候補遺伝子に対する機能的検証と平行して、Gitelman症候群などに代表される塩喪失性腎症患者のNGSパネル遺伝子スクリーニングを実施しており、本報告書記載時点で97家系100名の患者について網羅的遺伝子解析を完了した。驚くべきことに成人例では、その約半数で既知の責任遺伝子に変異が同定されず、やはり新規責任遺伝子の存在を示唆する結果であった。この結果については2019年米国腎臓学会で報告済みで、今後論文化の予定である。これらの遺伝学的未解決例の一部38例についてはさらなる新規候補遺伝子の同定を目指して米国ワシントン大学へ業務委託し、全エクソンシークエンスを遂行中である。
2: おおむね順調に進展している
申請書に記載した通り我々は塩喪失性腎症の新規責任遺伝子候補としてすでに①CACNA1H, ②SQSTM1の2つを同定し、着目している。①CACNA1Hについては共同研究施設よりノックアウト(KO)マウスの提供を受けたため、繁殖後に腎臓におけるNCC(Gitelman症候群の病因となる塩輸送体)のタンパク発現ならびに活性化を反映するリン酸化を野生型と比較した。結果、KO群ではわずかにNCC量の低下を認めた。これらの解釈を含め塩出納に何らかの影響を及ぼしている可能性を考慮し、引き続き検証を続けている。②SQSTM1(p62)に関しては、細胞に多く内在することからその影響を排除するべく、CRISPR-Cas9システムを用いて内在性p62をknock downしたHEK293T cell linesを作成し検証作業を行なった。C289Y変異を導入した変異p62ベクターを用いた強制発現系では、変異p62は最終アウトプットであるNCCを正に制御するWNK4キナーゼタンパクの発現を明らかに減少させた。病的意義を持つ可能性があり、引き続き機能検証を継続する予定である。なお個別の候補遺伝子に対する機能的検証と平行して、Gitelman症候群などに代表される塩喪失性腎症患者のNGSパネル遺伝子スクリーニングを実施しており、本報告書記載時点で97家系100名の患者について網羅的遺伝子解析を完了した。驚くべきことに成人例では、その約半数で既知の責任遺伝子に変異が同定されず、やはり新規責任遺伝子の存在を示唆する結果であった。この結果については2019年米国腎臓学会で報告した。これらの遺伝学的未解決例の一部38例については本学倫理委員会承認のもと米国ワシントン大学へ業務委託し、さらなる候補遺伝子同定を目指して全エクソンシークエンスを遂行中である。研究はおおむね順調に進展していると判断される
CACNA1Hについては、KOマウス解析を主体とし血液尿生化学の検討やCACNA1Hの腎尿細管局在評価を含め、引き続き検証を行う予定である。期待される表現系が観察された場合には、培養細胞系を併用し、その病態メカニズムについて培養細胞系を用い、細胞内Caバランスやカルシニューリンの塩輸送体群への影響を検証する。SQSTM1については引き続き培養細胞系での検証を継続する。期待される結果が得られれば、続いてSQSTM1変異ノックインマウス作成を行い、in vivoでの検証を行う予定である。これら二つの遺伝子機能解析と平行して、塩喪失性腎疾患にとどまらず遺伝性腎疾患が疑われる多くの患者について引き続きNGSパネルによる網羅的遺伝子解析を継続する。さらなる遺伝子-表現系データの蓄積から変異-表現系相関に関する知見を見出すとともに、引き続き未解決例の蓄積と再解析を経て、新規責任遺伝子発見を目指す。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件)
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