研究実績の概要 |
NDRG1CreERT2マウスとFloxPPARαマウスを交配させ、タモキシフェンを投与することで、腎臓近位尿細管特異的PPARαノックアウトマウス(n-PPARαKO)を作成した。そして、まずはPPARαが重要な役割を発揮するとされている飢餓負荷がかかった時の変化を検討した。n-PPARαKOマウスでは、正常モデルに比して、飢餓負荷下で低血糖状態になりやすい、体重・脂肪組織の減少、肝臓のグリコーゲンが減少しやすいなどといった特徴があることがわかった。PPARαは主に肝臓で作用するとされており、腎臓のPPARαが欠損したときに腎臓のみでなくこうして全身にその影響が出ると言うことは、今回の検討で初めてわかったことである。この成果は2021年6月に行われた日本腎臓学会で報告した。 しかしながら、本研究の計画書で最も評価したいアウトカムとして定めた腎臓の病理組織所見に関していえば、現在の研究条件ではn-PPARαKOマウスが飢餓状態で腎障害を発症するということは認められていない。今後、飢餓負荷や対象マウスの条件を再検討し、他のアウトカムも含めさらなる研究を行う予定である。また、虚血再灌流モデルマウス、protein overload腎症モデルについても検討を進めている。 また、並行して新たなPPARα特異的活性化薬であるペマフィブラートがProtein overload腎症から腎臓を保護するかという検討も行った。ペマフィブラートは同腎障害モデルマウスの腎障害を抑制する作用があることもわかった。この研究結果は、国際誌(Metabolites 2021, 11(6), 372)に報告済である。
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