研究課題
Fabry病(FD)の腎病変は、蛋白尿のような臨床所見出現後に酵素補充療法(ERT)が開始されても、予後改善効果は限定的であるため早期診断が重要となる。そのため蛋白尿に代わるFD腎病変特異的なマーカーが求められている。尿中マルベリー小体(uMB)というFD患者に特異的に認められる尿沈渣所見に着目した。uMBを契機にFDが診断された報告が散見されるが、uMBに関する研究はほとんどなく、その正体については明らかでない。本研究ではFD腎合併症におけるuMBの臨床的意義ならびにその正体について検討した。FD患者51例を対象とし、uMB並びに蛋白尿の有無の4群で患者背景を比較検討した。蛋白尿が陰性にも関わらず、uMBが陽性であった患者は21例(41%)も認められ、uMBが蛋白尿に先行していることが示唆された。続いてuMBの由来を検討するために免疫染色を行った。結果ポドサイトのマーカーに陽性であり、ポドサイト由来であることが示唆された。FD患者の腎生検所見では、ポドサイトが空砲変性を示す。uMBがポドサイト由来であることが判明したため、腎生検標本を用いてuMBの量と糸球体当たりの空胞変性の程度の関係を調べた。uMBの量は独自に導入した4段階の半定量評価で評価した。腎生検を施行した7例で検討したところ、uMBの量とポドサイトの空砲変性の割合は正の相関を示した。次にERTがuMBに与える影響に関して検討した。半定量法でuMBを評価された37例をERTの治療期間で4群に分けたところ、治療期間の長い症例ほどuMBは少なかった。最後に新規にERTを開始した9例で、治療前後のuMBの変化を検討したところ、18ヶ月間のERTでuMBは有意に減少した。以上uMBはポドサイトに由来し、蛋白尿より先行して出現することが示唆され、uMBは組織病変と強く関連した。また治療によりuMBは減少した。
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Nephrology Dialysis Transplantation
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