106例の維持血液透析患者から同意を取得した。このうち、①試験開始前からマグネシウム製剤を内服していた3例、②同意取得から試験開始時のSPP測定までの間に死亡・転院した8例、および③試験開始時のSPPが80mmHg以上であった9例、の計20例を除く86例に対して糖尿病の有無で層別化した置換ブロック法によるランダム割り付けを行った(酸化マグネシウム投与群 43例、非投与群 43例)。 本研究では予想に反してマグネシウムのSPP改善効果が認められなかった。Sakaguchiらは、保存期CKD患者に対する酸化マグネシウム投与が冠動脈石灰化の進行を抑制することを報告しているが、胸部大動脈石灰化の進行は抑制していない(Sakaguchi Y. JASN 2019)。また、マグネシウムと類似した機序で血管石灰化を抑制すると想定されているmyoinositol hexaphosphateも冠動脈石灰化の進行は抑制したが、胸部大動脈石灰化には有効性を示すことができなかった(Raggi P. Circulation 2020)。血管石灰化の病態や危険因子は冠動脈と大動脈で異なっている可能性があり、マグネシウムの効果は冠動脈に比して大動脈では発揮されにくいのかもしれない。いずれにせよ、本研究の結果からはマグネシウムの下肢血管の血流改善効果は否定的である。
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