研究課題/領域番号 |
19K17746
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
川口 真一 佐賀大学, 農学部, 准教授 (00722894)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | HIF活性化 / PHD阻害薬 |
研究実績の概要 |
本申請研究では、虚血症状を統一的に改善できる分子標的HIF(低酸素誘導因子)に注目して、経口虚血治療薬の開発を進めてきた。HIFを分解に導くタンパク質であるPHDを阻害することでHIFを活性化させ、虚血症状を統一的に改善することが可能となる。すでに、PHDを阻害する低分子化合物である化合物Aを見出しているが、その合成法は今まで報告されていない。本年度は、化合物Aの効率的な合成法を確立すべく研究を行ってきた。様々な合成ルート反応条件で検討した結果、購入可能な化合物から3段階トータル収率54%の高収率で目的の化合物を得る方法を見出した。本合成法はグラムスケールでも合成に応用可能である。本化合物は従来のHIF-PHD阻害剤が共通して持っている骨格である2-OG骨格を有していないことが特徴の化合物である。見い出した手法を利用し、当該年度中に22種類の誘導体を合成した。培養細胞をもちいたHIF活性化のアッセイでは11種類の化合物において化合物Aより強い活性がみられた。その中でも化合物Aの誘導体の方が100倍近く活性の強い化合物が見つかったことから、今後の展開に期待できる。さらに誘導体の合成を目指し、活性が高く毒性の低い化合物の取得を目指す。生化学的な知見では、合成した化合物Aはイムノブロット法で確認することでHIF1αを活性化することを確認した。また、PHD阻害により、HIF1αを活性化していることを支持する結果も得られた。このように、化合物Aの効率的な合成法を確立し、それに従い誘導体を合成し、それらが強い活性を有していることを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の目標であった化合物Aの効率的な合成法を確立することを達成したため、研究はおおむね順調に進展していると評価している。化合物Aの効率的な合成法の確立に至るまで、さまざまな合成ルートを検討した。また、精製手法もかなり検討した。精製に関して、最終的には年度途中で導入された精製装置であるリサイクル分取HPLCを使用したことにより、精製方法が確立され、最終的に生成物の合成法の確立に至った。リサイクル分取HPLCの導入には若手研究における独立基盤形成支援の制度が重要なカギとなっておりこの制度なくして、成功には導くことはできなかったかもしれない。HPLCの導入により精製法が確立できたことでカギとなる中間体の性質が明らかとなり、最終的には、再結晶での精製も可能となった。それにより、グラムスケールでの合成も可能となった。また、リサイクル分取HPLCを利用することにより、誘導体の合成も溶媒を選ぶことなく精製することが可能となり、迅速な誘導体展開が可能となった。合成法の確立だけでなく、合成した化合物のうち多くが、最初に想定していた化合物Aよりも活性が高く、期待できる化合物が多く得られたことは順調であるといえる。また、再現性も取れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後、細胞評価系でHIFの活性化を評価し、構造活性相関を明らかにすることで細胞および動物個体で作用するTrue Hit化合物の創出を目指す。今までに22種の新規化合物を合成したが、本年度もさらに倍ほどの化合物を合成し、評価する予定である、また、PHD1、PHD2、PHD3それぞれPHDのタンパク質の合成に取り組み、バキュロウイルスを活用した発現系で取得することをめざす。さらに、カイコ細胞を用いず、カイコ幼虫を活用した発現系で挑む。 タンパク質単体を取得し、共結晶構造解析や、光分解能NMRによる動的解析などにつなげ作用機序を明らかにする。 さらに、化合物Aとタンパク質(PHD1-3)の結合部位をNMR測定によって明らかにする。また、PHD1-3と化合物Aの結晶化を試み、X線構造解析によって、アロステリック部位での結合であるかを明らかにする。 作用機序に関する知見を得るためにコンピューターを利用したドッキングシュミレーションも活用していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じたがかなり額が小さく誤差範囲である。来年度用いる試薬代等の物品費などに充てる。
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