本研究課題では、①術前腎機能(推算糸球体ろ過量;eGFR)と手術リスクの連続的な関連性、②術前や周術期の透析療法(血液透析/腹膜透析)の実施法と術後アウトカムの関連性、の2点を明らかにすることを目標設定として実施してきた。 これらの知見が充実することで、腎機能障害の程度と手術リスクの関連がより詳細に可視化され予測および対処が可能となること、腎不全や透析患者に対する周術期の最適な治療選択を確立できること、などが期待され、研究を継続してきた。 2020年度以降、本研究課題の遂行にあたり、コロナ感染症の蔓延による活動の制限の影響が極めて大きかった。特に、データベースへのアクセスや、データベースからのデータ抽出・解析といったた一番重要なプロセスに制限がみられ、課題遂行にあたっては大きな影響をおよぼした。その中であっても、とくに心臓外科領域でのプロジェクトにおいて、いくつかの成果がとりまとめられた。一つは、当初予定していた、連続した腎機能と術後アウトカムの関係の可視化であるが、この目的は大動脈手術の領域で十分に達成できた。それ以外にも、腎機能低下例や透析症例の心臓外科手術について、様々な術式にフォーカスし、手術関連死亡や術後合併症などの短期アウトカムだけでなく、長期アウトカムについても、いくつかのプロジェクトを介して、検討することが可能であった。残念ながら、成果は血液透析に限られたが、本研究課題において、上記①・②の目的は達成された形となる。
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