慢性腎臓病に続発する副甲状腺機能亢進症(SHPT)は骨代謝亢進をきたし,この骨代謝にエストロゲン欠乏が与える影響を検討するために雌SDラットを用いてsham群,卵巣摘出を行ったOVX群,5/6腎臓摘出を行ったCKD群,卵巣摘出と腎臓摘出の双方を行ったOVX+CKD群を準備し,各群を比較検討した. 体重はOVX群,OVX+CKD群で有意に増加し,CKD群で減少した.血中骨代謝関連マーカーは,Intact PTH,FGF23値はsham群,OVX群と比較してCKD群で有意に上昇しており,CKD+OVX群では上昇が軽減されていた. 次に骨組織のmRNAの発現を検討した.骨形成に大きく関わる骨芽細胞の分化などを反映するとされるRunx2,Osterix,Col1a1,ALPがOVX群でsham群と同等で,CKD群では有意に発現が亢進しており,CKD+OVX群ではその程度が減弱していた.骨吸収を反映するとされるRANKL/OPG比について,OVX群ではsham群と有意差はなかったが,CKD群では発現がsham群と比較して有意に亢進しており,CKD+OVX群ではCKD群と比較してさらに発現が亢進していた. 最後に大腿骨で3点曲げ試験を行い,骨強度の比較を行った.骨破断に必要な最大強度はsham群と比較して,CKD群で有意差はないが小さい傾向にあり,骨が脆弱化している可能性が示唆された.一方でOVX群,CKD+OVX群では有意差はないものの,我々の予想に反して破断に必要な最大強度がsham群と比較して大きい傾向にあった. まとめると,卵巣摘出はSHPTによる骨吸収亢進を増強することが明らかとなった.一方で骨形成はCKDにOVXが追加されると減弱したが,骨強度の低下を証明できなかった.これはOVX群で体重が増加したことが骨強度強化に関連した可能性がある.
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