研究実績の概要 |
慢性腎臓病(CKD)でみられる腎臓の線維化は不可逆的変化であり、線維化を起こした臓器は最終的に機能不全に陥る。単球・マクロファージおよびT細胞に発現するRegnase-1とRoquinは炎症性mRNAの抑制因子であり、これらの欠損マウスでは心臓や肺、肝臓での線維化をひきおこすことが知られている。 CKD患者でみられる臓器障害において、炎症が関与するメカニズムの詳細は未だ不明な点が多い。CKDにおけるRegnase-1とRoquinなどのRNA結合タンパク質による炎症性mRNA制御とマクロファージ活性化の関連を示した報告はこれまでにないが、CKD進行の背景にある持続性の炎症病態と炎症性mRNA制御タンパクの関連は興味深い。 昨年度はCKD患者血液から採取したPBMCとヒト単球株化細胞THP-1の培養系を用いて、LPSあるいはFGF23で刺激した後の炎症性mRNA制御タンパクの発現と活性化を測定し分析し、RNA結合タンパク質と炎症性mRNA発現調節の関連を示すデータが得られたため、今年度はCKD患者の病期ごとの炎症の進行とそれに関わる免疫細胞でのRegnase-1とRoquinの関与を明らかにするために、進行したCKD患者のPBMCでFGFR1,IL-6,Klotho,TLR4,VDRとRegnase-1およびRoquinの発現を調査し、病期の浅いCKD患者や健常対照者と比較した。その結果、Roquin以外の遺伝子の発現はCKD患者で有意に増加していること、健常者ではIL-6の発現は各種受容体発現と負の相関を示していたが、重症群では弱い正の相関に転換していることなど、病期の進行に伴うPBMCの反応性の変化が示された。重症群ではRegnase-1やRoquin発現と他遺伝子発現の相関が低下していることからも、炎症性mRNA制御タンパクの発現変化が病態を形成する可能性が示唆された。
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