研究実績の概要 |
動物体内で外来性のネフロン前駆細胞から生理機能を有した、in vivoでの腎臓再生を研究している。本申請ではin vivo再生腎に対し薬剤を投与することで、薬剤性腎障害を惹起させ解析し、薬剤性腎障害の発生機序を解明することが目的である。本年度は、再生用の胎生期腎臓に異種間のヒトネフロン前駆細胞からネフロン再生が可能かを検討した。ヒト細胞が利用可能なDTAモデルを使用し、Six2陽性のネフロン前駆細胞だけを除去し、腎発生ニッチを空けることで、マウス腎臓内部にヒトiPS細胞から誘導したネフロン前駆細胞から再生した幼弱なネフロンをin vitroで生成した。この成果は、Fujimoto T, Yamanaka S, Tajiri S, Takamura T, Saito Y, Matsumoto N, Matsumoto K, Tachibana T, Okano HJ, Yokoo T. Generation of Human Renal Vesicles in Mouse Organ Niche Using Nephron Progenitor Cell Replacement System. Cell Rep. 2020 Sep 15;32(11):108130. で報告した。 この成果を用いて今後は腎毒性薬剤を投与し、腎毒性評価を検討する。具体的には腎毒性としてシスプラチンまたはゲンタマイシンを投与し、再生腎における腎障害マーカー(Kim 1)を評価することでまずはin vitroでの薬剤性腎障害モデルの検討を進める。 また胎仔の細胞移植法としてより簡便で有効な手法の検討を行い、既存の効率をこえる移植法を開発した。新たな移植法について、再生尿細管の機能や腎毒性暴露後の反応、生存期間などを解析中である。本手法はin vivoで異種細胞を受け入れ可能とするために免疫不全システムと前駆細胞除去システムを同時に搭載したマウスモデルを作製することで、ヒト細胞におけるin ivo腎毒性評価へと応用をすすめていく。
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