本申請は、生体内で再生腎臓に腎毒性のある薬剤を投与し、薬剤性腎障害を引き起こすことを目的としている。ヒトiPS細胞を用いた再生細胞での薬剤性腎障害を再現することにより、最終的に障害メカニズムの解明に役立てることを考えた。これまでの研究で、腎臓を再生させる方法として、標的細胞誘導死システムを搭載したマウス胎仔の腎臓を再生の足場に使用し、外来性ネフロン前駆細胞(NPC)を移植する手法を開発した。この方法により、ホスト側のNPCが除去され、外来性のNPCに置き換わることが確認され、結果として、移植された細胞から構成されるキメラネフロンが生成されることが明らかになった。最初は標的細胞誘導死システムの誘導剤としてジフテリアトキシンを使用したが、ヒト細胞が非特異的に死滅してしまうため、タモキシフェンを誘導剤に用いた新たなモデル(Six2-DTA)を開発した。ヒトiPS細胞から誘導したNPCをSix2-DTAマウスの胎仔腎臓に移植したところ、幼若ではあるがヒトとマウスのキメラ腎臓がin vitroで再生された。しかし、慢性の薬剤性腎障害を評価するためには生体内で長期に再生ネフロンを維持しなければならない。新に新生仔期の腎臓にネフロン前駆細胞を移植し、外来性細胞を組み込みキメラ腎臓化できないかと考えた。野生型マウスの新生仔の腎臓に同種NPCを移植したところ、4ヶ月以上キメラネフロンが維持され、一ヶ月間のシスプラチン反復投与によるよってシスプラチン誘発腎障害が再現できることが示された。さらに免疫不全マウスの新生仔腎臓に誘導ヒトNPCを移植したところ生体内で近位尿細管への分化が確認でき、シスプラチン投与によってヒトKIM-1の発現が認められた。ただし、ヒト細胞に関しては、ホスト集合管や尿路系との接続が達成されておらず、統合型キメラの作製と同キメラを用いた長期解析が今後の課題である。
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