研究課題/領域番号 |
19K17757
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研究機関 | 川崎医科大学 |
研究代表者 |
城所 研吾 川崎医科大学, 医学部, 講師 (50435020)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 糖尿病性腎臓病 / 内皮-上皮連関 / カルシウム動態 |
研究実績の概要 |
糸球体上皮細胞内への過剰なカルシウム流入は細胞骨格のremodelingを誘導し、結果アルブミン尿が惹起される。近年Transient Receptor Potential Cation hannel(TRPC)6やTRPC5、またATP感受性イオンチャネル型受容体も糸球体上皮細胞のカルシウム流入に重要な経路であることが報告されている。高血糖による機能障害を有した血管内皮細胞由来のATPが、糸球体上皮細胞上の ATP感受性イオンチャネル型受容体を介して、糸球体上皮細胞内へのカルシウム流入増大により、細胞障害を促進するとの仮説を立てこれを検証した。 ヒト糸球体内皮細胞では、高血糖や一酸化窒素(Nitric oxide; NO)経路の阻害剤により、上清中のATPレベルが上昇した。この上昇はATP放出に関与するPannexin1の阻害作用を持つProbenecidの添加により抑制された。内皮障害糖尿病モデルマウス(eNOS-KO/STZ)では有意な血漿ATPレベルの上昇、尿中アルブミン排泄量の増加を認めた。Probenecidの投薬により、血漿ATPレベルの有意な低下とともに、尿中アルブミン排泄量の減少も認めた。PAS染色による糸球体組織評価において、eNOS-KO/STZで有意に増加した糸球体硬化スコアは、Probenecidの投薬により改善を認め、またTUNEL染色による糸球体細胞アポローシス評価も改善が見られた。Podocin-GCaMPマウスを用いた実験系では、eNOS-KO/STZで見られた糸球体上皮細胞内カルシウムレベル上昇は、Probenecid投与による軽減された。糖尿病性腎臓病におけるアルブミン尿の出現、糸球体上皮細胞障害進展には細胞内カルシウム濃度の増大が関与しており、内皮障害により増強されることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本実験で使用するeNOS-KO/Podocin-GCaMP5-tdTomatoマウスの交配、作成に、想定していたよりも多くに時間を要し、糸球体上皮細胞内のカルシウム動態を評価する実験系の着手が大幅に遅れたことが大きな要因である。 またCOVID-19による当施設の一時的な実験動物搬入制限により、購入予定の遺伝子改変動物(VE-cadherin-CreマウスとPannexin1-floxマウス)が入手できていない。現在購入に向け申請予定である。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子改変動物(VE-cadherin-CreマウスとPannexin1-floxマウス)の申請を引き続き行い、in vivoの実験系を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
遺伝子改変動物の購入ができていないため、次年度使用額が生じた。 遺伝子改変動物の購入に充てる予定である。
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