糖尿病性腎臓病において、障害内皮より放出されたATPが、ATP感受性イオンチャネル型受容体を介し糸球体上皮細胞(ポドサイト)内への過剰なCa2+流入を生じ、細胞骨格のremodelingを誘導しアルブミン尿を惹起する、と仮説立て検証を行う。障害内皮細胞のPannexin1/ATP動態の評価をin vivo、in vitroで検証し、Pannexin1阻害によるATP変化、ポドサイトのCa2+濃度変化をin vivo imaging技術を活用して生体内で証明する。 ヒト糸球体内皮細胞では、高血糖刺激およびeNOS-NO経路の阻害(L-NAME、PKG阻害薬)により、上清中ATPレベルが上昇した。このATP上昇はPannexin1の阻害作用を持つProbenecidにより抑制された。内皮障害糖尿病モデルマウス(eNOS-KO/STZ)では有意な血漿ATPレベルの上昇、尿中アルブミン排泄量の増加を認めた。Probenecidの投薬により、血漿ATPレベルの有意な低下、尿中アルブミン排泄量の減少も認めた。糸球体組織評価において、eNOS-KO/STZで増加した糸球体硬化スコアは、Probenecidの投薬により改善を認め、またTUNEL染色による糸球体細胞アポトーシス数も減少した。糖尿病Podocin-GCaMP5マウスで見られたポドサイト内Ca2+レベル上昇は、Probenecid投与による軽減された。培養ポドサイトにおいて、ATP刺激(50μM)により細胞内Ca2+濃度の上昇、actin rearrangemnetが観察された。P2受容体阻害薬であるsuramin(100μM)の添加によりこの変化は抑制された。 糖尿病性腎臓病におけるアルブミン尿の出現、ポドサイト障害進展にはATP/P2受容体を介した細胞内Ca2+濃度の増大が関与しており、内皮障害下で増強されることが示唆された。
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