研究課題/領域番号 |
19K17771
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中島 輝恵 大阪大学, 薬学研究科, 特任助教(常勤) (60768670)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ヒト汗腺 / カルシウムイメージング / 動態観察 / 汗の運搬 / 発汗メカニズム |
研究実績の概要 |
発汗は皮膚表面に水分を分泌することで、その水分の蒸発熱を利用して体表から余分な熱を取り除く、ヒト特異的な体温冷却システムである。その発汗器官であるエクリン汗腺の汗運搬動態およびそのメカニズムについてこれまで明らかになっていない。そこで、これまでに確立した複雑なコイル構造を維持した状態でのエクリン汗腺のライブ観察法と汗そのものの可視化法を組み合わせることで、汗腺の動きによって汗がどのように運搬されるのかを明らかにすることを目指している。そのため、汗腺内にある汗そのものの可視化法を検討している。 令和元年度、マイクロビーズの挿入によりビーズの動きから汗の流れを検討したが、挿入ビーズの量、挿入部位等の課題点が多くマイクロビーズによる観察法では動きを検出するのは難しいと判断した。そのため、令和2年度は、前半、マイクロビーズによる汗の動態観察法の実験を引き続きを行ったが、研究の方向性の転換を行うことにした。そのため、昨年度の今後の推進方策であるヒト汗腺組織を用いたex vivoカルシウムイメージングを行った。発汗刺激であるアセチルコリンによって起きるカルシウム流入および、前から見えている収縮を同時観察できた。現在、最適濃度の検討、イメージングの定量的解析を行うためのデータの集積を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の方向性を転換し、間接可視化法の改善に成功し、カルシウムイメージングによる収縮や汗生成の細胞レベルでの変化を観察できるところまで成功したが、目的とする汗の動きを検出する点において未だクリアにできる解決法を見いだせていない。そのため、予定よりやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究として、カルシウムイメージングを行うにあたり、カルシウムイオノフォアを引き起こすイオノマイシンによる蛍光強度の校正をおこない、アセチルコリン刺激によっておこるカルシウム流入量の定量的解析を目指す。カルシウム流入後に起こるcAMP活性にも着目し、cAMPの濃度変化の観察も行いたい。また、汗は血液から汗腺分泌管管腔内に生成された直後は高カルシウムを含む中性であるが、皮膚表面に排出されるまでの間に導管において、イオンの再吸収により酸性化される。そこで、摘出した汗腺をカルシウム指示薬とpH感受性指示薬で標識し、蛍光強度の変化を観察する。これにより、引き続き汗腺の動きによる汗の運搬メカニズムの解明を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入予定であった試薬の購入費が少なく、また参加学会がオンライン開催のため旅費等を不要になった。さらに学会参加費を別予算により支出できたため、出費を抑えることができた。しかし、2021年度は論文投稿予定等があるため、および、学会にも積極的に参加したいと考えているため、使用する予定である。
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