発汗は皮膚表面に水分を分泌することで、その水分の蒸発熱を利用して体表から余分な熱を取り除く、ヒト特異的な体温冷却システムである。しかし、その発汗器官であるエクリン汗腺の汗運搬メカニズムについて未だ明らかになっていない。エクリン汗腺は構成細胞である筋上皮細胞の存在から収縮するであろうと考えられており、研究代表者はこれまでに複雑なコイル構造を維持した状態でのエクリン汗腺に対して生体標識法とライブ観察技術を組み合わせることで、汗腺の収縮を証明してきた。そこで、本研究プロジェクトではこれまでに確立したライブ観察法と汗そのものの可視化法を組み合わせることで、汗腺の動きによって汗がどのように運搬されるのかを明らかにすることを目指していた。 令和元年度、マイクロビーズの挿入によりビーズの動きから汗の流れを検討したが、挿入ビーズの量、挿入部位等の課題点が多くマイクロビーズによる観察法では動きを検出するのは難しいと判断した。令和2年度は、前半、マイクロビーズによる汗の動態観察法の実験を引き続き行ったが、研究の方向性の転換を行うことにした。そのため、令和3年度はex vivoカルシウムイメージングを行うことで、発汗刺激であるアセチルコリン刺激がどのように汗腺組織を伝播し、筋上皮細胞の収縮が管全体の動きとして引き起こされるのか検討した。
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