アトピー性皮膚炎(AD)は増悪と軽快を繰り返す,そう痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くは「アトピー素因」を持ち、すなわちIgE抗体を産生しやすい状況にある。一方で蕁麻疹も病因としてはマスト細胞/好塩基球がIgE受容体を介して活性化し、ヒスタミン等のメディエーターを放出することが機序として考えられている。このようにADと蕁麻疹はどちらもIgEが関係する皮膚アレルギー疾患である。重症のADでは非特異的IgEが非常に高く、そのような例ではダニ特異的IgEが高値となる症例も多い。チリダニはホコリの中に無数に存在しておりAD患者は暴露により容易に即時型反応を頻回に起こしても不思議ではないが、重症のAD症例においてダニ抗原への暴露で即時型反応を起こすことはあまり経験をしない。これらの臨床的な疑問を元に、重症AD患者ではマスト細胞/好塩基球が抑制を受けているのではないかとの仮説を立てた。現在までに研究者らのグループでは、AD 38名、健常人21名の血液を集め、フローサイトメトリを用いて好塩基球の活性化マーカーを調べた。結果、AD患者から得られた好塩基球は定常状態において健常人よりわずかな活性化を認めるが、抗IgE抗体を用いた刺激に対して反応性の低下を示した。またEASIスコアが高値の症例や総血清IgEが高値の症例、すなわちADのより重症例ではこの傾向をより強く認た。また、AD患者から得られた好塩基球は健常群と比べIgEの受容体であるFcεRIを強く発現しているものの、これらの2群では好塩基球の表面に結合するIgEの発現には差異を認めなかった。研究成果はAllergology International誌に発表し、優秀論文賞を受賞した。さらに今年度は小児アトピー性皮膚炎におけるダニアレルギーや汗アレルギーを含めたアレルギーマーチの全貌を解明すべく多施設調査を施行した。
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