研究課題/領域番号 |
19K17776
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
牧野 雄成 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 特任准教授 (00433037)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 全身性強皮症 / 血管内皮細胞 / microRNA / 線維化 |
研究実績の概要 |
全身性強皮症は、皮膚の硬化(線維化)を主症状とし、皮膚だけでなく心臓、肺、消化管など他臓器にも線維化を生じうる疾患である。血管障害、自己免疫異常、代謝異常などが相互に関与して病態が形成されると考えられているが病因はいまだ明らかになっていない。 全身性強皮症では寒冷暴露により末梢血管が攣縮するレイノー現象をはじめ、様々な血管障害が生じることが知られており、血管障害が全身性強皮症の硬化病態へ関与していることがこれまでの研究で報告されている。本研究ではこうした背景から血管異常、特に血管内皮細胞の異常に着目した。血管内皮細胞のどのような異常に着目するかだが、近年様々な病態への関与が指摘されている、microRNAに着目した。 本研究では、全身性強皮症の皮膚組織から微小血管内皮細胞を単離培養し、細胞内と、細胞外に放出されるエクソソームに含まれるmicroRNAについて健常人と 比較し、全身性強皮症におけるmicroRNAの異常が皮膚硬化などの病態に関与するか検討することを主題としている。 具体的には、①皮膚組織から皮膚微小血管内皮細胞を単離培養、②血管内皮細胞内と、血管内皮細胞外に放出されるエクソソーム内のmicroRNAを健常人と比較、③発現異常を認めるmicroRNAについて、血管内皮細胞における役割の検討、④全身性強皮症のマウスモデルにおけるmicroRNAの治療効果、を計画した。 これまでに全身性強皮症患者と健常人の皮膚から血管内皮細胞の単離培養に成功し、血管内皮細胞内から回収したmicroRNAを用いてアレイ解析を行った。その結果、全身性強皮症の血管内皮細胞内で上昇する3つのmicroRNAを同定し、これらのmicroRNAが血管内皮細胞に与える影響について解析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに、全身性強皮症患者と健常人の皮膚から血管内皮細胞の単離培養に成功し、血管内皮細胞内から回収したmicroRNAを用いてアレイ解析を行った。その結果、全身性強皮症の血管内皮細胞内で上昇する3つのmicroRNAを同定した。これらのmicroRNAが血管内皮細胞に与える影響について、細胞増殖、細胞遊走能、脈管形成能、内皮間葉移行を中心に解析を行っている。また、これらのmicroRNAが、血管内皮細胞から放出されるエクソソーム内でも上昇しているか検討するため、細胞上清から回収したエクソソーム内のmicroRNAについて、デジタルPCRにおいて発現解析を行ったが、有意な差は得られなかった。
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今後の研究の推進方策 |
全身性強皮症の血管内皮細胞で上昇していたmicroRNAについて、血管内皮細胞に与える影響の解析を引き続き行う予定である。また、全身性強皮症のマウスモデル(ブレオマイシン誘導皮膚硬化マウスモデル)におけるmicroRNA発現の解析を行い、標的としたmicroRNAが全身性強皮症と同様に上昇しているか検討を行う予定である。
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