全身性強皮症は、皮膚の硬化(線維化)を主症状とし、皮膚だけでなく心臓、肺、消化管など他臓器にも線維化を生じうる疾患である。血管障害、自己免疫異常、代謝異常などが相互に関与して病態が形成されると考えられているが病因はいまだ明らかになっていない。全身性強皮症では寒冷暴露により末梢血管が攣縮するレイノー現象をはじめ、様々な血管障害が生じることが知られており、血管障害が全身性強皮症の硬化病態へ関与していることがこれまでの研究で報告されている。本研究では、全身性強皮症の皮膚組織から微小血管内皮細胞の培養を行い、細胞内のmicroRNAの発現を健常人と比較し、全身性強皮症の血管障害に関与するmicroRNAの解析を目的とした。まず全身性強皮症患者と健常人の皮膚から血管内皮細胞の単離培養を行い、血管内皮細胞内から回収したmicroRNAを用いてアレイ解析を行った。その結果、全身性強皮症の皮膚微小血管内皮細胞では、健常人と比較してmiR-155、miR-221、miR-222の3つのmiRNAの発現が有意に上昇していることを見出した。miR-155、miR-221、miR-222をそれぞれ血管内皮細胞で高発現させると、間葉系細胞のマーカーが上昇傾向となり、また血管内皮細胞マーカーは低下傾向となった。また、miR-221を血管内皮細胞で高発現させると血管新生が阻害された。これらの結果から、miR-155、miR-221、miR-222は、全身性強皮症の血管内皮細胞の機能変化に関与している可能性が示唆された。エクソソーム内のmiR-155、miR-221、miR-222の発現、機能解析については今後研究を継続する予定である。全身性強皮症の血管障害に対するmiRNAの理解がすすむことで、病態解明へつながることが期待される。
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