研究課題
表皮およびCD4(+)T細胞に対するIL-9の機能解析のため、理化学研究所バイオリソース研究センターと共同研究にて作成したIL-9R-flox/floxマウスと、KRT14cre/ERT2マウスおよびCD4creマウスでそれぞれ交配を重ねて、表皮特異的IL-9受容体欠損マウス(KRT14cre/ERT2 IL-9R-flox/floxマウス)およびCD4(+)T細胞特異的IL-9受容体欠損マウス(CD4cre IL-9R-flox/floxマウス)を作成した。アトピー性皮膚炎は炎症性皮膚疾患の一つであり、病変部では、表皮の肥厚や真皮内の炎症細胞浸潤などの病理組織像を呈する。アトピー性皮膚炎様モデルとして、野生型マウスに卵白アルブミン貼布やハプテン塗布により皮膚炎を誘導し、病理組織像を観察した。真皮内の炎症細胞浸潤の増加や真皮の浮腫を呈したが、表皮の肥厚が弱かった。表皮に対するIL-9の機能を検討するため、イミキモド塗布により、表皮の肥厚を伴う皮膚炎を誘導した。野生型マウスにイミキモドを塗布すると、皮膚の発赤、鱗屑、肥厚が生じ、病理組織では、表皮の著明な肥厚と、皮下の炎症細胞浸潤を呈した。イミキモド皮膚炎を誘導し、さらにリコンビナントIL-9もしくはPBSを投与したところ、IL-9投与群では、皮膚炎がより悪化し、表皮の肥厚も強くなった。次に、エストロゲンの誘導体であるタモキシフェンを投与し、表皮特異的にIL-9受容体を欠損させた後、イミキモド塗布による皮膚炎の状態を経時的に観察し、表皮の厚さや炎症細胞浸潤の程度などをコントロールマウスと比較検討した。表皮特異的IL-9受容体欠損マウスでは、コントロールと比較して、皮膚炎が減弱し、表皮の肥厚の程度が弱かった。表皮へのIL-9シグナルの欠如が、表皮の肥厚の抑制に働く可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
皮膚炎については、卵白アルブミン貼布やハプテン塗布によるモデルでは表皮の肥厚が弱く、表皮に対する検討が困難であったが、イミキモドを用いて、表皮の著明な肥厚を伴う皮膚炎を誘導した。表皮角化細胞特異的IL-9受容体欠損マウスおける、皮膚炎症状および病理組織学的な評価・検討は順調に進んでいる。
イミキモド塗布による皮膚炎は、表皮の肥厚に加えて、好中球やIL-17の増加などが生じ、乾癬様皮膚炎モデルとされている。アトピー性皮膚炎は主にTh2型サイトカインをメインとした病態で、乾癬は主にTh17型サイトカインをメインとした病態であると考えられていたが、近年では、アトピー性皮膚炎においてもTh17型のサイトカインの役割が注目されていることから、イミキモド誘発皮膚炎においても、IL-9の役割について検討をすすめていきたいと考えている。アトピー性皮膚炎様モデルとしては、ハプテン塗布の間隔を変えたり、観察期間を長期間にして、Th2型反応に加えて表皮肥厚が生じる皮膚炎を誘導し、評価をする。また、コンディショナルノックアウトマウスとコントロールマウスでの皮膚病変部の各種サイトカイン、ケモカインの遺伝子発現の解析、表皮角化細胞特異的IL-9受容体ノックアウトマウスのケラチノサイトを用いたin vitroの実験も行い、ケラチノサイトに対するIL-9シグナルの役割を解明していきたい。ヒトのアトピー性皮膚炎の血液解析についても、検討をすすめていく。
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