研究課題
免疫アレルギー性疾患や自己免疫疾患において、炎症性サイトカインであるIL-9の病態への関わりが明らかにされつつあるが、炎症性皮膚疾患におけるIL-9の機能的役割については未だ不明な点が多く残されている。本研究で我々は、マウスモデルを用いて皮膚炎の病態形成とIL-9の関係について検討を行った。皮膚炎を誘導した野生型マウスの病変皮膚にIL-9を局所投与すると皮膚症状が悪化し、一方で抗IL-9抗体を局所投与すると皮膚炎が軽減することを確認した。IL-9の皮膚への直接的な役割をさらに詳しく調べるため、CRISPR/Cas9ゲノム編集により表皮特異的にIL-9受容体(IL-9RA)を欠損するマウスを新たに樹立した(表皮特異的IL-9RA欠損マウス)。DNFB反復塗布による皮膚炎やイミキモド誘発性乾癬様皮膚炎のモデルを用いて解析したところ、野生型マウスと比較して表皮特異的IL-9RA欠損マウスの症状は明らかに軽減していた。病理組織学的解析から表皮特異的IL-9RA欠損マウスでは表皮の肥厚が減弱し、皮膚に浸潤するマスト細胞の数が減少していた。以上の結果から表皮に対するIL-9シグナルが、皮膚炎の悪化に直接的に関わることが示唆された。また病変部表皮のRNAシークエンス解析により、表皮特異的IL-9RA欠損マウスの表皮では野生型マウスの表皮と比較してペプチドYY(PYY)やCXCL2の発現低下が認められた。PYYは食欲抑制作用のある消化管ホルモンとして知られているが、ケラチノサイトでの役割についてはほとんど知られていない。炎症性皮膚疾患の一つである乾癬においては、メタボリック症候群など全身性疾患との関連性が指摘されており、今後はこのペプチドが病態の悪化に関与している可能性についても検討を深め、IL-9とPYYを中心とした皮膚炎の悪化サイクルの機序を解明したい。
すべて 2020
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件)
Modern Rheumatology
巻: 31 ページ: 249~260
10.1080/14397595.2020.1719576
Journal of Investigative Dermatology
巻: - ページ: -
10.1016/j.jid.2020.09.028