研究課題/領域番号 |
19K17791
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
目代 貴之 東北大学, 金属材料研究所, 特任助教 (30466544)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | プラズマ医療 / 電解水 / 低温プラズマ / 活性酸素種 |
研究実績の概要 |
本研究では創傷治癒における創傷面環境を改善する新しい治癒技術の構築を目的としている。そのため、傷の治癒において、生体機能が正常に機能するよう損傷個所の環境を整えることを第一に考えている。昨年度より酸性電解水処理後に処置部を大気圧プラズマで照射するためのプラズマ装置の開発を試みてきた。最適条件を検討するためガス流量、印加電圧等を制御できる装置構成にすることで各種条件を制御できるプラズマ装置を作製することに成功した。また、本装置は混合ガスを使った実験系を検討していたため、二種類のガスでプラズマを生成できるように調整できる仕様とした。この点において、昨年度完成させた装置の改良を進め、二種類のガスを混合し制御できる仕様に変更して、混合ガスプラズマの生成と安定化を図った。混合ガスにおけるプラズマ照射から生成される活性酸素種において電子スピン共鳴(ESR)装置を用いたスピントラッピング法にてさらなる研究調査を実施した。その結果、プラズマを発生させるガスなどの条件の違いから生成する活性酸素種が異なることが明らかになった。ESR装置を用いた測定によりこれまでとは異なるスペクトラムの観測ができたため、現在その解析も進めている。さらに、研究計画書における細胞実験のパートにおいて、当初はマウスやラット由来の細胞を使用予定であったが、ヒト由来の細胞を入手できたので、混合ガスプラズマにおける細胞の影響をヒト由来の細胞を用いて確認している状況である。 以上から、今年度は研究計画書に従い一部であるがin vitroにおけるプラズマ照射の研究を進めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画書どおり昨年度は、研究上必要とする装置開発を行ったため、今年度は細胞を使用した実験フェーズであった。そのため、細胞を使用して実験を行っていたが二種類のガスが使用できる装置仕様であったため、生成されたプラズマが不安定になる問題が生じた。そこで、プラズマの安定化を図るため、新たにガス混合装置を作製し実験に供した。新たに混合ガスにおける活性酸素種に関して調べた結果、これまでとは異なるスペクトラムの観測ができた。そのため、現在この活性酸素種に関しても解析を進めている。細胞においては、正常ヒト表皮化細胞と正常ヒト繊維芽細胞が入手できたので、プラズマを発生させるガス種の違いが与える細胞毒性や細胞促進などを実施している状況である。また、今年度は、新型コロナウイルス感染症の流行により研究室の立ち入りが制限されるなど感染症拡大予防から研究活動も制限があった。さらに、必要消耗品に関しても品薄で入手しにくい状態となったため購入できない期間があった。 以上の理由から当初の研究計画よりも遅れが生じることになったため、今年度の計画からいくとやや遅れ気味であると判断した。当初予期せず起こる対策に関しては、大きな研究目的は変更せず支障がでてきた時点で細分化された研究計画項目などを再検討し柔軟に対応していくつもりである
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画どおり、動物を使ったin vivoにおける実験系を予定しているが、動物実験を行う前に代替法として細胞をつかって創傷治癒アッセイモデルを構築してin vitroでの実験を予定している。また、装置安定化を図ったため、引き続き混合ガスプラズマ照射により生成される活性酸素など化学種の測定を行い作用機序に関しても研究を進めていく予定である。
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