研究課題/領域番号 |
19K17794
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
大沼 毅紘 山梨大学, 大学院総合研究部, 助教 (80793116)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 抗PD-1抗体 / 治療抵抗性 / MHC class I消失 |
研究実績の概要 |
代表者らは前回の研究課題にて、抗PD-1抗体治療によって長期病状安定を示すも1年後に急激に悪化したメラノーマ転移病巣より、β2mg遺伝子の異常によってMHC class Iを完全に欠損したがん細胞株と、正常β2mg遺伝子導入によってMHC class Iを人工的に復活させたがん細胞株、そしてNativeな自己がん細胞株には反応できないがMHC class Iを復活させた自己がん細胞には強く反応出来る腫瘍浸潤T細胞株のセットを作成、所持している。これらの共培養を3日間行った結果、ほぼすべてのがん細胞株が拒絶されたが、ごく一部、生存している細胞を回収、増幅させることに成功した。この細胞ではMHC class Iの発現レベルは共培養前と同等に保たれていた。しかし、再び同じ腫瘍浸潤T細胞株と共培養したところ、T細胞による認識、およびT細胞による腫瘍細胞障害性は著しく低下していた。以上より、このがん細胞株にはMHC class I以外のT細胞抵抗性が誘導された可能性が高い。この腫瘍特異的浸潤T細胞に抵抗するがん細胞株と、抵抗性を獲得させる前のがん細胞株でDNA chip比較を行い、抵抗性獲得に伴って発現増加する遺伝子と低下する遺伝子の機能について検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度に予定していた実験の大部分は完遂できている。T細胞抵抗性となったがん細胞株と元のがん細胞の遺伝子発現プロファイルをDNA chipによって比較し終えた。そのうち、抵抗性がん細胞株で低下する遺伝子については、レトロウイルスを用いてがん細胞株に強制発現させ、T細胞からの認識が回復するかを検証する実験の準備を終えている。
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今後の研究の推進方策 |
来年度以降の実験は以下の通りである。T細胞抵抗性獲得に伴って低下する各候補遺伝子群の強制発現実験を行うために、それら遺伝子をコードするレトロウイルスベクターを作成し、がん細胞に強制発現する。そして、がん細胞に特異的に反応するT細胞と共培養し、認識が増強するかどうかを検討する。反対にT細胞抵抗性獲得に伴って上昇する各候補遺伝子についても、それらをsiRNA でノックダウンしたがん細胞を作成し、がん細胞に特異的に反応するT細胞と共培養し、認識が増強するかどうかを検討する。最終的には別の患者由来の複数のがん細胞株とそれを特異的に認識するT細胞株のペアを用いて、同定した候補分子のT細胞感受性への影響を検証する。
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