2020年度は各種の表皮常在細胞によるサイトカイン産生量をマルチプレックスELISA法により測定した。これまでの報告ではケラチノサイトがケモカインを産生すると考えられていたが、研究代表者が行った解析により、ケラチノサイトよりも、ランゲルハンス細胞の方がより多くケモカインを産生することが分かった。また、未成熟ランゲルハンス細胞と成熟ランゲルハンス細胞間でのケモカイン産生量を比較すると、未成熟ランゲルハンス細胞の産生量の方が高いことが示唆された。さらに、一部のTh2サイトカインは未成熟なランゲルハンス細胞により高く分泌されることが示唆された。この結果はアトピー性皮膚炎で未成熟ランゲルハンス細胞が増加していることと関連があると考えられ、アトピー性皮膚炎の発症に未成熟ランゲルハンス細胞が関わることが考えられた。 さらにアトピー性皮膚炎患者で発現減少がよく観察される、皮膚バリア因子「ロリクリン」発現量と、表皮内での一次繊毛形成率に、相関があることが分かった。ケラチノサイトにおいて一次繊毛形成を阻害すると、細胞成熟マーカー発現量が増加したことから、一次繊毛はケラチノサイト成熟を制御することが示唆された。アトピー性皮膚炎ではケラチノサイトの一次繊毛が顕著に増加しており、またケラチノサイトはimmatureであることから、一次繊毛はケラチノサイトの分化を制御し、この破綻が皮膚バリア破綻を引き起こし、アトピー性皮膚炎の発症に寄与することが考えられた。 これらの発見は、Communications biology(リバイス提出中)、Experimental dermatology(in press)に発表した。またFrontiers in cell and developmental biologyに総説を発表した。
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