弾性線維性仮性黄色腫(PXE)は、弾性線維に変性、石灰化をきたす常染色体劣性の遺伝性疾患である。PXE患者では、皮膚だけではなく、眼や心血管など弾性線維に富む組織が障害され、失明によるQOLの低下や虚血性心疾患、脳梗塞の原因ともなり得る全身性の進行性疾患である。PXEの責任遺伝子はAB CC6であることがわかっており、PXE患者では血中のピロリン酸濃度が低下していることが知られているが、重症度との相関性を論じた報告はなく、重症度を規定する因子は未だ不明である。 本研究の目的は、抗石灰化因子であるfetuin-A、matrix gla protein、osteocalcin、ankylosis proteinに着目し、その血中濃度と重症度の相関性を解析することで重症度規定因子や予後予測因子を明らかにすることにある。重症度の評価には国際基準であるPhenodex scoreだけではなく、当教室が独自に作成したderm-score、また重症度をより反映する目的に作成された本邦の重症度基準を用いて評価した。 我々は、現在までに直接シークエンス法およびMLPA法を用いて150を超えるPXE患者の遺伝子解析を終了した。また、ELISAキットを用いてfetuin-A、matrix gla protein、osteocalcin、ankylosis proteinの血中濃度を測定し、血中濃度の低下を認めたが、遺伝子型や重症度との相関性についてはみられなかった。 今回、PXEの重症度を規定する因子や予後予測因子を明らかにすることはできなかった。今後はPXEの病態を明らかにすべく、ABCC6遺伝子を介したシグナル伝達ネットワークモデルの構築を試みる。
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