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2019 年度 実施状況報告書

沖縄に残るハンセン病既存検体を用いた遺伝子発現解析による各病型の発症機序の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K17805
研究機関琉球大学

研究代表者

林 健太郎  琉球大学, 医学部附属病院, 助教 (50631991)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2021-03-31
キーワードハンセン病 / らい菌 / らい反応 / トランスクリプトーム / 主成分分析
研究実績の概要

ハンセン病はらい菌による抗酸菌感染症であるが、発症した宿主により多菌型、少菌型、境界型と極めて異なる臨床像を呈し、治療過程の副反応であるらい反応の頻度や病態も全く異なる。これは不可逆的な神経障害を残す原因となるが、その差異が何に起因するのかは未だ全く知られていない。らい菌は、ヒトに感染しても必ずしも発症せず、宿主の免疫能や全身状態、栄養状態、生活環境が、発症や病型に大きく関与する。同一の病原菌でありながら、あたかも全く異なる感染症のように、大きく異なる病状をとりうる疾患は、ハンセン病以外に存在しない。
抗酸菌の1種であるMycobacterium leprae(らい菌)による感染性肉芽腫症で、主に皮膚のマクロファージと末梢神経鞘の細胞内に持続感染する。起炎菌であるらい菌は、未だに人工培地での培養も成功しておらず、ハンセン病の病態解明が進まない一つの要因と考えられる。
本研究では、ハンセン病の各病型に特異的な遺伝子発現の網羅的探索を行い、何故、同一の起因菌が、大きく異なる病態を引き起こすのかを解明し、その予見手法や予防法の可能性を検討する。実際には、各病型と2種のらい反応発生時の既存の病理検体について、パラフィン組織由来のトランスクリプトーム解析を行い、得られた発現データに複数の統計解析を加え、各病型と2種のらい反応に寄与する遺伝子発現を明らかにする。
かつてハンセン病が多発していた沖縄において長年に渡り保存されてきた患者病変組織と、固定組織でのトランスクリプトーム解析を可能とした技術進歩、さらに当教室で構築されたバイオインフォマティクスの経験の、3つが揃うことで可能となった研究提言である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

過去に琉球大学でハンセン病と診断されている患者の中で、病理標本を再確認し、多菌型については、病理組織学的にもFite染色によりらい菌を同定し、多菌型ハンセン病であると確定できるが、ハンセン病少菌型については、病理組織のみでは確定できないため、らい菌特異的なプライマーを用いたPCR法でらい菌の検出を試み、過去の確定診断を再確認している。しかし、少菌型であるため、らい菌の検出は容易ではなく、nested PCR法を用いて検討している。
また、PCRにてらい菌が検出され、ハンセン病と確定できた患者の皮膚組織のパラフィン検体の数検体を、外注先の株式会社マクロジェン・ジャパンに提出している。パラフィン組織からRNAの抽出について、トランスクリプトーム解析に十分なRNA量と質を担保するために、RNAの抽出を繰り返している。
ある程度年代の古い検体においても、量と質が十分に確保できているケースもあり、RNA量と質が確保できなった検体については、別の検体に置き換えており、実施計画よりもやや遅れている状況である。
当初、予定していたパラフィン組織の全検体について、RNA量と質が確保できなかったため、別の皮膚組織を再度用意している。

今後の研究の推進方策

解析結果の正確性を担保するため、トランスクリプトーム解析を行う検体の選択は十分に検討する。具体的には、検体組織由来のRNAの量と質を確保するため、RNA抽出後の検定を行い、基準を満たしたRNAについてのみ、ライブラリー作製からトランスクリプトームデータを取得する。
RNA抽出からトランスクリプトームの生データの検出までは、株式会社マクロジェン・ジャパンに外注委託する。
ハンセン病の各病型において、トランスクリプトーム解析が可能な検体について、6検体を目標にピックアップする。
ハンセン病の多菌型、少菌型、境界型、あるいは、2群の「らい反応」のそれぞれに高発現、または低発現である遺伝子について、遺伝子発現変動解析を行う。1万サンプル以上の正常組織トランスクリプトームデータを持つデータベースのGenotype-Tissue Expression(GTEx)(The GTEx Consortiu, Nat Genet. 2013)や、アトピー性皮膚炎や乾癬など、代表的炎症性皮膚疾患の登録済みの公開発現解析データも利用し変動遺伝子群の抽出に用いる。
さらに遺伝子発現に統計学的な有意差を持つ遺伝子群についてパスウェイ解析を行い、各病型に関連する生物学的経路を探索する。上記の発現変動解析で得られた病型特異的遺伝子の発現をリアルタイムPCRで再検証し、蛋白発現の局在性を免疫染色で確認する。

次年度使用額が生じた理由

初年度は、ハンセン病患者組織からDNAを抽出し、らい菌特異的なプライマーを用いて、PCRやnested PCRを行った。らい菌が検出された検体について、RNAの抽出を行った。さらに、抽出したRNAの質と量についての検定を行い、基準に満たない検体については、再度切り出し、RNAの抽出を試みている。基準を満たした検体については、トランスクリプトーム解析に進んでおり、現在、トランスクリプトームデータの取得待ちの状態である。
本研究費について、DNA抽出、PCR、RNA抽出、RNA検定料、トランスクリプトーム解析に使用したが、まだRNA抽出へ至らない病理検体があり、その分の解析費用に残金が発生している。
次年度は、残金も含め、さらに検体数を増やし、前年度同様に、DNA抽出、PCR、RNA抽出、RNA検定料、トランスクリプトーム解析を行うために使用する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Two Cases of Squamous Cell Carcinoma Arising on Refractory Skin Ulcers in Patients with a History of Hansen's Disease2019

    • 著者名/発表者名
      FUKAI Kyoko、KOMATSU Kotaro、MATSUO Yuji、HAYASHI Kentaro、KARIYA Yoshiyuki、MIYAGI Takuya、YAMAGUCHI Sayaka、TERUYA Misao、TAKAHASHI Kenzo
    • 雑誌名

      Nishi Nihon Hifuka

      巻: 81 ページ: 115~119

    • DOI

      https://doi.org/10.2336/nishinihonhifu.81.115

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 2018年度琉球大学医学部皮膚科外来紹介患者のまとめ2019

    • 著者名/発表者名
      山口 さやか, 上原 遥, 兼島 明子, 伊藤 誠, 松尾 雄司, 佐久川 裕行, 山城 充士, 深井 恭子, 岡本 有香, 宮城 拓也, 林 健太郎, 安村 涼, 内海 大介, 新嘉喜 長, 山本 雄一, 高橋健造
    • 学会等名
      第87回沖縄地方会,
  • [学会発表] 両腸骨部のTumoral carcinosisの一例2019

    • 著者名/発表者名
      兼島 明子, 林 健太郎, 上原 遥, 伊藤 誠, 松尾 雄司, 高橋 健造
    • 学会等名
      第86回沖縄地方会

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公開日: 2021-01-27  

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