研究課題
DNAマイクロアレイ法による解析で細胞老化に関係するインスリン様増殖因子(IGF1)に結合するIGF1結合蛋白(IGFBP)が、MEFで老化によって発現が変動する分子として同定されたため、IGFBPの細胞老化への関与を検討した。MEFを3T3法を用いて継代・培養を行うと、5継代目(P5)から細胞老化に陥った。若いP2と比較して老化したP8のMEFでは、IGFBP familyの中でIGFBP5の発現低下が最も大きな変化であった。若いP2細胞でIGFBP5をノックダウンすると、SA-β-GAL染色陽性細胞増加、p16やp21の発現上昇、細胞増殖抑制といった細胞老化の所見が出現した。また若いP2細胞にIGFBP5を過剰発現する、あるいはIGFBP5を添加した培地で培養すると、SA-β-GAL染色陽性細胞数が減少し、細胞老化が抑制された。次に蛍光標識したsiRNAを用いてIGFBP5をノックダウンし、1細胞レベルで細胞老化が生じるか観察した。siRNAが導入されノックダウンが起きた細胞と起きていない細胞で、SA-β-GAL染色陽性細胞の割合は同程度であった。このため、IGFBP5による細胞老化抑制作用は細胞内ではなく細胞外に分泌されたIGFBP5によると推察された。次にIGFBP5の細胞老化への作用機序を調べた。IGFBP5ノックダウン細胞では、老化P8細胞と異なりAKTのリン酸化レベルは変化しなかった一方で、老化P8老化と同様にERK1/2のリン酸化レベルが増加していた。ERK2をノックダウンすると、IGFBP5ノックダウンで生じたSA-β-GAL染色陽性細胞数の増加が抑制された。ERKの上流タンパクであるMEK1/2のリン酸化レベルもIGFBP5ノックダウンで増加していたことから、ERKシグナルの関与が示唆された。以上から、MEFにおいて継代に伴い低下するIGFBP5がERK2の活性化を介して細胞老化を引き起こすことが示された。
すべて 2022
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Aging
巻: 14 ページ: 2966-2988
10.18632/aging.203999