研究課題/領域番号 |
19K17812
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
角田 加奈子 岩手医科大学, 医学部, 講師 (10611030)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | HDAC6 / COX2 / PGE2 / 乳房外Paget病 |
研究実績の概要 |
乳房外Paget病は、外陰部に好発する皮膚悪性腫瘍である。腫瘍細胞の大部分は表皮内に留まり、浸潤・転移例は少ないものの、一旦浸潤・転移の生じた進行期症例には、局所切除に加え、抗がん薬を併用した薬物療法や、放射線療法が試みられている。しかし、多くは治療抵抗性であり予後不良な症例が多い。 本研究では、進行期乳房外Paget病に対する効果的な薬物療法開発のために、HDAC6-COX2関連分子の動態を解析し、Paget細胞の浸潤・転移機構に関する役割を明らかにする。本研究では、①乳房外Paget病の浸潤・転移機構に、腫瘍細胞と周囲の癌関連線維芽細胞で形成されるがん微小環境に於いて、HDAC6-COX2 axisが重要な役割を担う事を明らかにする。さらに、②COX2およびHDAC6阻害剤の臨床適応の可能性について基礎実験を実施する。 研究計画は、2つに分かれる。STEP1: 培養細胞系用いた、HDAC6-COX2-PGE2関連分子の動態解析。ERBB2陽性細胞株と、HDAC6ノックアウトマウスのMEFを用いて両者の共培養系によるcollective cell invasionの証明に係る実験を実施する。解析対象分子を、real-time PCR/western blotで評価し、リン酸化状態の評価は特異的リン酸化抗体を用る。細胞の運動能・浸潤能については、Matrigel invasion assay、増殖能に関してはATP assayで評価する。STEP2: ヒト腫瘍組織に於ける免疫組織染色。STEP3: XenograftモデルにおけるHDAC6/COX2阻害薬の浸潤転移、増殖に与える影響の解析:進行期Paget患者の原発巣からサンプルを採取し、ヌードマウス皮下におけるXenograftの作製を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ERBB2陽性細胞株(SKBR3, MDA-MB-435)と、HDAC6ノックアウトマウスのMEFならびに腫瘍由来のCAFを用いて両者の共培養系による、collective cell invasionの証明に係る実験系を確立した。共培養によって、ERBB2陽性細胞株からのPGE2の分泌は、CAF群でmRNAレベデルでの増加を認めたものの培養上清中でELISAで検出可能なレベルでの発現増加は認められなかった。PGE1/2/3のmRNA発現上昇によって、がん細胞でのHDAC6とその関連分子の発現増加も誘導されていることが明らかとなった。これらのがん細胞では、細胞増殖、ならびに浸潤能が20%程度亢進していることが明らかとなった。乳がん培養細胞株系を用いた検討では、腫瘍細胞と周囲の癌関連線維芽細胞(CAF)で形成されるがん微小環境に於いて、HDAC6-COX2が重要な役割を担っている可能性が示唆れた。 免疫染色では、HDAC6の過剰発現は、進行期の乳房外Paget病の浸潤先進部で確認され、周囲にはαSMA陽性のCAFと見られる線維が細胞が多数認められた。これらのHDAC6陽性の細胞は集塊を形成しcollective cell invasionの動態を示していた。 研究のうまく進捗していない部分は、解析に用いる乳房外Paget病の腫瘍細胞の初代培養が得られていない点である。この間、乳房外Paget病の治療例に於ける腫瘍原発巣の採取が出来なかった。
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今後の研究の推進方策 |
新規乳房外Paget病切除時を待って、直ちに腫瘍細胞の初代培養細胞を樹立し実験につなげる。解析系は乳がん培養細胞株で既に樹立済みであり、対応可能である。今後も上記細胞が得られなかった場合、現状のデータで論文を作成結果を発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
初代培養細胞株の樹立に係る試薬を次年度使用額として計上する。
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