乳房外Paget病は、外陰部に好発する皮膚悪性腫瘍である。多くは治療抵抗性であり予後不良な症例が多い。本研究では、進行期乳房外Paget病に対する効果的な薬物療法開発のために、HDAC6-COX2関連分子の動態を解析し、Paget細胞の浸潤・転移機構に関する役割を明らかにする。 研究計画は前年に引き続き以下を並行して行った。①培養細胞系用い、HDAC6-COX2-PGE2関連分子の動態解析は、共培養系によるcollective cell invasionの証明を実施した。real-time PCR/western blotで評価し、リン酸化状態の評価は特異的リン酸化抗体をいた。細胞の運動能・浸潤能については、Matrigel invasion assay、増殖能はATP assayで評価した。②ヒト腫瘍に於ける免疫組織染色を実施した。③進行期Paget患者の原発巣からサンプルを採取し、Xenograftの作製を目指した。 結果は、PGE1/2/3のmRNA発現上昇に伴い、がんでのHDAC6とその関連分子の発現増加も誘導された。これらのがん細胞では、細胞増殖、ならびに浸潤能が20%程度亢進していることが明らかとなった。乳がん培養細胞株系を用いた検討では、腫瘍細胞と周囲の癌関連線維芽細胞(CAF)で形成されるがん微小環境に於いて、HDAC6-COX2が重要な役割を担っている可能性が示唆れた。免疫染色では、HDAC6が、進行期の乳房外Paget病の浸潤先進部で過剰発現し、周囲にはαSMA陽性のCAFと見られる線維が細胞が多数認められた。これらのHDAC6陽性の細胞は集塊を形成しcollective cell invasionの動態を示していた。 PGEの乳房外Paget病における分泌は、HDAC6の過剰発現誘導に関与し、浸潤・転移能の獲得に関与している可能性が示唆された。
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