皮膚疾患におけるプラズマサイトイド樹状細胞の活性化制御メカニズムの解明

2019 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 19K17818
• 研究機関: 順天堂大学
• 研究代表者: 貝谷 綾子 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 博士研究員 (50833604)
• 研究期間 (年度): 2019-04-01 – 2022-03-31
• キーワード: プラズマサイトイド樹状細胞 / ペア型受容体

研究実績の概要

本研究は自己DNAによるプラズマサイトイド樹状細胞(pDC)の活性化及び関連する皮膚疾患の制御メカニズムを解明するため、pDCに発現するペア型受容体に注目して解析を行っている。
pDCに特異的に発現するLMIR8の生理的なリガンドは未だ不明であり、2019年度は主にLMIR8のリガンド探索を実施した。他のLMIRファミリー分子のリガンドとして脂質が同定されていることから、脂質を中心に探索を行った。リガンド探索のツールとして、LMIR8の細胞外領域とヒトIgG1のFc領域を融合させたキメラ蛋白(LMIR8-Fc)を作製した。 LMIR8-Fcが結合する分子を探索する結合アッセイ、及びLMIR8の架橋刺激によりGFPを発現するレポーター細胞を用いたレポーターアッセイを利用して、リガンドスクリーニングを実施した。まずスクリーニング対象として、購入した脂質を用いた。その結果、レポーターアッセイにおいてGFPの発現を誘導する脂質をFACSで確認できたが、生体内で生理的に機能する有望なリガンドとは認められなかった。今後スクリーニングの対象を広げ、引き続きリガンドの探索を行う予定である。
また、TLR7およびTLR9リガンドで刺激したpDCの活性化(特にI型IFNなどのサイトカイン・ケモカインの産生、pDCの細胞表面分子の発現)がLMIR3あるいはLMIR8により制御されるのか明らかにするための実験をin vitroで行っている。
さらに、in vivoにおいて野生型・LMIR3欠損・LMIR8欠損マウスへのTLRリガンドを投与し、 pDCの活性化制御に差がみられるか検討している。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

リガンド探索のためのツールとしてレポーター細胞に加え、LMIR8-Fcを作製することができた。現時点ではリガンドの同定に至っていないが、両ツールを用いることで、より効果的にリガンドをスクリーニングすることが可能である。したがって、研究はおおむね順調に進展していると考えている。

今後の研究の推進方策

リガンド候補脂質の同定を目指すため、今後は購入可能な脂質に加え、定常状態あるいは炎症下の皮膚から分離した脂質をスクリーニングする。
また、リガンド探索と共に、DNA複合体によるpDCの活性化がどのように制御されるのか明らかにするため、野生型・LMIR3欠損・LMIR8欠損マウスを利用しin vitroおよびin vivoの実験系で解析を行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

当初今年度に予定していた実験について、次年度に合わせて実施した場合のほうが、より効率的な研究費の利用につながると判断したため、次年度使用額が生じた。今年度行う予定の研究計画と併せて実施する。

研究成果

• [雑誌論文] Differential Lipid Recognition by Mouse versus Human CD300f, Inhibiting Passive Cutaneous Anaphylaxis, Depends on a Single Amino Acid Substitution in its Immunoglobulin-Like Domain (2020)
  • 著者名/発表者名: Izawa Kumi, Kaitani Ayako, et al.
  • 雑誌名: Journal of Investigative Dermatology 巻: 140 ページ: 710～713.e3
  • DOI: 10.1016/j.jid.2019.08.439
  • 査読あり
• [雑誌論文] CD300fは食物アレルギーの治療標的となりうる (特集 食物アレルギー研究) (2020)
  • 著者名/発表者名: 内田 志野, 伊沢 久未, 安藤 智暁, 貝谷 綾子, 北浦 次郎
  • 雑誌名: 臨床免疫・アレルギー科 巻: 73 ページ: 398-405
• [雑誌論文] CD300f is a potential therapeutic target for the treatment of food allergy (2019)
  • 著者名/発表者名: Uchida Shino, Izawa Kumi, Ando Tomoaki, Yamada Hiromichi, Uchida Koichiro, Negishi Naoko, Kaitani Ayako, Maehara Akie, Nagamine Masakazu, Kamei Anna, Takamori Ayako, Maeda Keiko, Nakano Nobuhiro, Shimizu Toshiaki, Ogawa Hideoki, Okumura Ko, Nagahara Akihito, Watanabe Sumio, Kitaura Jiro
  • 雑誌名: Allergy 巻: 75 ページ: 471～474
  • DOI: 10.1111/all.14034
  • 査読あり
• [雑誌論文] The phytosphingosine-CD300b interaction promotes zymosan-induced, nitric oxide?dependent neutrophil recruitment (2019)
  • 著者名/発表者名: Takahashi Mariko、Izawa Kumi、Urai Makoto、Yamanishi Yoshinori、Maehara Akie、Isobe Masamichi、Matsukawa Toshihiro、Kaitani Ayako、Takamori Ayako、Uchida Shino、Yamada Hiromichi、Nagamine Masakazu、Ando Tomoaki、Shimizu Toshiaki、Ogawa Hideoki、Okumura Ko、Kinjo Yuki、Kitamura Toshio、Kitaura Jiro
  • 雑誌名: Science Signaling 巻: 12 ページ: eaar5514～5514
  • DOI: 10.1126/scisignal.aar5514
  • 査読あり
• [雑誌論文] 薬剤による偽アレルギーにおけるCD300fの役割について (特集 アレルギーの分子細胞機構) (2019)
  • 著者名/発表者名: 貝谷 綾子, 高森 絢子, 安藤 智暁, 伊沢 久未, 北浦 次郎
  • 雑誌名: 臨床免疫・アレルギー科 巻: 72 ページ: 122-128
• [学会発表] Differential lipid recognition by mouse versus human CD300f, inhibiting IgE-mediated mast cell activation, depends on a single amino acid substitution in its immunoglobulin-like domain (2019)
  • 著者名/発表者名: Ayako Kaitani, Kumi Izawa, Tomoaki Ando, Akie Maehara, Enzhi Yin, Moe Matsuzawa, Saaya Fukase, Hexing Wang, Keiko Maeda, Nobuhiro Nakano, Ko Okumura, Jiro Kitaura
  • 学会等名: 第48回日本免疫学会学術集会
• [学会発表] Identification of inhibitory mechanisms in pseudo-allergy involving Mrgprb2/MRGPRX2-mediated mast cell activation (2019)
  • 著者名/発表者名: Yoko Okamoto, Ayako Takamori, Kumi Izawa, Tomoaki Ando, Ayako Kaitani, Akie Maehara, Enzhi Yin, Hiromichi Yamada, Hexing Wang, Nobuhiro Nakano, Ko Okumura, Jiro Kitaura
  • 学会等名: 第48回日本免疫学会学術集会
• [学会発表] An inhibitory receptor CD300f inhibits the pathogenesis of OVA-induced food allergy in mice (2019)
  • 著者名/発表者名: Anna Kamei, Shino Uchida, Hiromichi Yamada, Kumi Izawa, Tomoaki Ando, Naoko Negishi, Akie Maehara, Ayako Kaitani, Yoko Okamoto, Nobuhiro Nakano, Ko Okumura, Jiro Kitaura
  • 学会等名: 第48回日本免疫学会学術集会
• [学会発表] Exaggerated inflammasome activation by a novel NLRP1 mutant derived from a rare disease with severe liver fibrosis (2019)
  • 著者名/発表者名: Taiki Ando, Akie Maehara, Tomoaki Ando, Kumi Izawa, Ayako Kaitani, Enzhi Yin, Takuma Ide, Keiko Maeda, Nobuhiro Nakano, Naoto Tamura, Ko Okumura, Jiro Kitaura
  • 学会等名: 第48回日本免疫学会学術集会
• [学会発表] Mast cell- and IgE-dependent anaphylaxis is regulated by the interaction between inhibitory LMIR3/activating LMIR7 and specific lipids (2019)
  • 著者名/発表者名: Kumi Izawa, Ayako Kaitani, Tomoaki Ando, Akie Maehara, Takuma Ide, Moe Matsuzawa, Saaya Fukase, Anna Kamei, Taiki Ando, Nobuhiro Nakano, Ko Okumura, Jiro Kitaura
  • 学会等名: 第48回日本免疫学会学術集会
• [学会発表] 喘息の病態形成における抑制型受容体CD300fの役割 (2019)
  • 著者名/発表者名: 貝谷綾子, 伊沢久未, 安藤智暁, 前原明絵, 奥村康, 北浦次郎
  • 学会等名: 第68回日本アレルギー学会学術大会
• [学会発表] Ceramide‐CD300f interaction inhibits Mrgprb2‐mediated pseudo‐allergic drug reactions in mice (2019)
  • 著者名/発表者名: 伊沢久未, 高森絢子, 貝谷綾子, 安藤智暁, 前原明絵, 奥村康, 北浦次郎
  • 学会等名: 第68回日本アレルギー学会学術大会
• [学会発表] 経皮感作による食物アレルギーの病態メカニズム (2019)
  • 著者名/発表者名: 山田啓迪, 米山俊之, 貝谷綾子, 内田志野, 伊沢久未, 安藤智暁, 北浦次郎, 大塚宜一, 奥村康, 清水俊明, 清水俊明
  • 学会等名: 第43回日本小児皮膚科学会学術大会