研究課題
研究の目的は、プラズマサイトイド樹状細胞特異的に発現するペア型免疫受容体LMIR8に着目して皮膚疾患モデルを解析して、プラズマサイトイド樹状細胞の活性化及び関連する皮膚疾患の病態制御メカニズムを解明することである。これまでの研究から、LMIRファイミリー分子は脂質を認識する受容体であると想定されている。LMIR8はFcRgと会合する活性化型受容体であるが、LMIR8抗体によるLMIR8の架橋刺激はTLR9リガンド(非メチル化CpG-DNA) によるプラズマサイトイド樹状細胞のI型IFNの産生を抑えることが示された。しかし、野生型とLMIR8欠損マウス由来のプラズマサイトイド樹状細胞を非メチル化CpG-DNA やTLR7リガンド(イミキモド)で刺激してもI型IFNの産生に差は認められなかった。また、野生型とLMIR8欠損マウスの皮膚にイミキモドや非メチル化CpG-DNAを塗布あるいは皮下注射した場合の局所におけるサイトカイン(I型IFNなど)・ケモカインの産生量や皮膚の炎症に有意な差は認められなかった。他方、定常状態の皮膚から抽出した脂質をプレートに固相化して、LMIR8の細胞外領域を利用する結合及びレポーターアッセイを行っているが、現時点で、LMIR8のリガンド脂質の同定に至っていない。現在、種々の疾患モデルで強い炎症を誘導したときの皮膚で増加する脂質や皮膚疾患の病態形成に関与する可能性がある病原体(細菌・真菌など)由来の脂質にも着目し、スクリーニングを行っている。本研究の目的を達成するためには、LMIR8リガンドの同定が不可欠であると考え、多角的な解析を継続している。
3: やや遅れている
野性型とLMIR8欠損マウス由来のプラズマサイトイド樹状細胞をTLR7やTLR9のリガンドで刺激してもI型IFNの産生に差がなく、野性型とLMIR8欠損マウスの皮膚にTLR7やTLR9のリガンドを投与しても皮膚の炎症に差がないことが判明した。つまり、これらの条件下では、プラズマサイトイド樹状細胞に特異的に発現するLMIR8のリガンドが存在しないと考えられた。従って、皮膚で強い炎症が誘導されたときに増加する脂質や細菌・真菌などが産生する脂質がLMIR8リガンドとして作用し、皮膚の炎症を制御する可能性が示唆された。しかし、現時点で、LMIR8リガンドの同定に至っていないので、本研究はやや遅れていると考えられる。
今後、種々の疾患モデルで強い炎症を誘導したときの皮膚や皮膚疾患の病態形成に関与する可能性がある病原体(細菌・真菌など)から脂質を抽出して、LMIR8の細胞外領域を利用する結合及びレポーターアッセイを行い、皮膚でLMIR8リガンドの増加する条件を見出し、そのリガンド脂質を同定する。さらに、皮膚でLMIR8リガンドの増加する条件下で野生型及びLMIR8欠損マウスを解析することにより、プラズマサイトイド樹状細胞に発現するLMIR8の役割を解明し、研究目的の達成を目指す。
新型コロナ感染の拡大により、研究制限や年度内の実験に必要な物品の調達遅延のため、予定していた実験(リガンドスクリーニングやマウス実験の解析)に支障をきたした。次年度において、リガンドスクリーニングの解析に必要な経費やマウス実験に必要な経費(マウス代など)を使用する。
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