研究課題
カルシトリオールは活性型ビタミンD3であり、その欠乏は糖尿病等の疾患と関連している。最近、カルシトリオールが角化細胞において抗菌ペプチドの産生を誘導すること、腸管上皮と眼のタイトジャンクション(TJ)の構造を調節することが報告されている。従って、糖尿病性潰瘍患者等の創傷治癒遅延患者の皮膚にカルシトリオールを使用することは、頑固な感染を防御し、創傷治癒を促進することを示唆している。皮膚バリア機能の障害、感染症などが存在するアトピー性皮膚炎患者においても、カルシトリオールが皮膚炎の増悪を防止する可能性が提唱されている。しかし、カルシトリオールが皮膚のTJ構造を調節しているかは不明である。そこで本研究では、カルシトリオールがTJ関連タンパク質を誘導し、糖尿病性皮膚バリア機能を強化するか否かを検討する。ここでは、カルシトリオールが選択的に正常ヒト角化細胞と高濃度グルコースで処理した角化細胞のクローディン1、3、4と7といったTJ構成タンパクのmRNA発現とタンパク発現を増加させることを示した。さらに、カルシトリオールが角化細胞モノレイヤーの経上皮電気抵抗と細胞間透過性というTJバリア機能のパラメーターを用いることで示した。また、カルシトリオールは、ロリクリンやフィラグリンといった角化細胞分化マーカーの発現も増強し、角化細胞の分化にも関与していると考えられた。以上より、カルシトリオールが角化細胞のTJバリア機能を調節して、糖尿病性皮膚免疫に貢献していることがわかった。
2: おおむね順調に進展している
令和元年度の計画の①カルシトリオールに対するタイトジャンクション構成タンパクに及ぼす影響、②カルシトリオールのタイトジャンクションバリア機能に及ぼす影響、③カルシトリオールの角化細胞分化マーカー発現に対する効果を明らかにし、国内学会で発表したため、概ね順調に進展している。
①カルシトリオールのタイトジャンクションバリア機能の調節メカニズム、②カルシトリオールの糖尿病性マウスのタイトジャンクションバリア機能に及ぼす影響、③カルシトリオールの糖尿病性マウスの細胞極性に及ぼす影響、④カルシトリオールの糖尿病性マウスの角化細胞分化マーカーに及ぼす影響、⑤カルシトリオールの糖尿病性マウスの血管新生に対する効果、⑥カルシトリオールの糖尿病性マウスの創傷治癒に対する効果
年度内に使い切れなかったので、次年度に繰り越す。使用計画:学会参加および消耗品の購入
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