研究課題
急性骨髄性白血病(AML)は異常増殖と分化不全を特徴とする悪性腫瘍であり、白血病幹細胞が存在することが知られている。我々は、転写因子FOXOの機能解析を行い、白血病幹細胞の分化が解糖系をはじめとした代謝制御と深く関連していることを見出した。しかしながら、その未分化性維持機構の詳細は明らかにされていない。2019年度に、すべての代謝酵素、トランスポーターを対象にCRISPR/Cas9機能的スクリーニングを実施し、リソソームの機能維持および鉄代謝関連の酵素を未分化維持因子として同定した。さらに、リソソームは鉄代謝を通じて白血病細胞の未分化維持寄与することを明らかにした。本年度は、リソソーム-鉄経路の治療標的としての可能性を検討するとともに、その未分化維持機構を解析した。リソソームの機能阻害は、複数の白血病細胞株(HL-60、THP-1、U937)に対し分化および増殖停止を誘導した。また、リソソームの機能阻害は複数の白血病細胞株(HL-60、THP-1、U937)のコロニー形成能を顕著に阻害する一方、正常造血幹細胞に対して影響を及ぼさなかった。従って、リソソームは白血病の治療標的として有望であることが示唆された。また、リソソーム-鉄経路により発現制御を受けるがん遺伝子を同定した。さらに、その因子の過剰発現はリソソームの機能阻害による分化誘導を阻害した。従って、リソソーム-鉄経路による白血病細胞の未分化維持機構の一端が明らかとなった。
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Scientific Reports
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