研究課題/領域番号 |
19K17826
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
中嶌 圭 山梨大学, 大学院総合研究部, 臨床助教 (20447709)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 悪性リンパ腫 / 解糖系 / HexokinaseⅡ(HXKⅡ) / NF-kB / HIF |
研究実績の概要 |
Burkitt lymphoma(BL)由来の細胞株、DLBCL由来の細胞株を用いHexokinaseⅡ(HXKⅡ)発現とNF-kB活性化の関係を調べた。BL細胞株ではDLBCL細胞株に比べHXKⅡが強く発現していた。c-MYCを介したHXKⅡの発現誘導はBL細胞株、DLBCL細胞株ともに共通してみられたが、NF-kB-p65リン化を介したHIF1による発現誘導はBLのみで見られた。免疫染色を臨床検体でおこないHXKⅡの発現レベルを比較したところBLではDLBCLよりも強い発現がみられた。以上のことからBLではDLBCLよりもNF-kB-p65リン酸化が亢進することでHIF1を介したHXKⅡ発現が強力に起きていると考えられた。これらの細胞を低酸素環境下で培養したところHIF1の発現亢進とともにHXKⅡの発現もさらに亢進した。またリンパ腫治療のキードラッグのシスプラチン(CDDP)への抵抗性がみられた。低酸素化によるHXKⅡの誘導がCDDP抵抗性を導いていると考えられた。ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤で多発性骨髄腫の治療薬であるパノビノスタットは低酸素環境下におけるHIF1、HXKⅡの発現を抑制しCDDP抵抗性を解除した。パノビノスタットを治療薬を用いることでHXKⅡを抑制し低酸素環境下の治療抵抗性細胞にアポトーシスを誘導させられると考えらえた。以上の知見をExperimental Hematology誌(2019 Oct;78:46-55)に投稿した。HXKⅡからNF-kB経路へのポジティブフィードバック的なリンクを解明する実験も行っいる。グルコースアナログである2-deoxy-D-Glucoseや、グルコースフリーの培地を用い解糖系を抑制することでNF-kBの活性化が抑制されることが示され、なんらかのポジティブフィードバック機構が存在することが確認されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HXKⅡの発現機序、リンパ腫の治療抵抗性への関与、HXKⅡを標的とした治療の有望性についての実験結果を論文にまとめ投稿することができた。Glycolytic enzyme hexokinase II is a putative therapeutic target in B-cell malignant lymphoma(Exp Hematol2019 Oct;78:46-55)。おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
解糖系の側副路であるヘキソサミン合成経路を介した糖鎖修飾、サーチュイン1によるNF-kBの脱アセチル化に焦点を当て研究を進めていく。
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