B細胞性リンパ腫細胞株を用い解糖系の亢進を解析したところ、c-MYC、NF-kB-p65リン化を介したHIF1によるHexokinaseⅡ(HXKⅡ)発現誘導が見られた。持続的な解糖系の亢進にはエネルギーセンサーを介したポジティブフィードバック機構の存在が必要であると考えた。エネルギーセンサーの一つであるAMPKに注目し実験をおこなった。①HXKⅡを高発現するバーキットリンパ腫細胞株においてビグナアイド系糖尿病薬であるメトホルミンはエネルギーセンサーであるAMPKのリン酸化をもたらした。②低グルコース培地はAMPKのリン酸化をもたらした。③メトホルミンはNF-kBの脱アセチル化(acetyl K310)に引き続いて脱リン酸化(p65 Ser536)をもたらした。AMPKのリン酸化はタンパク質脱アセチル化酵素であるSIRT1の活性化をもたらすことから、SIRT1がNF-kBの脱アセチル化(acetyl K310)に引き続き、脱リン酸化(p65Ser536)が引き起こすという仮説を立てた。④SIRT1活性化薬であるSRT2183による刺激でtotal NF-kBの発現低下がみられたが、⑤NF-kBの脱アセチル化(acetyl K310)は確認できなかった。AMPK→SIRT1を介したポジティブフィードバック機構を証明することはできなかった。現在は、解糖制御転写因子であり細胞内グルコース濃度の上昇によりミトコンドリア外膜から核へ移行するとされているMondoAに注目している。解糖系が亢進しているリンパ腫細胞では細胞内グルコース濃度上昇によりMondoAが核へ移行し、これがHXKⅡ高発現のポジティブフィードバックを形成していると予想し実験を進めている。
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