研究実績の概要 |
近距離原爆被爆者81名と血液悪性腫瘍のない非被爆者20名の全エクソームを行い、両者の遺伝子変異の違いについて解析した。 原爆被爆者では、クローン性造血(CH)の頻度は被爆者で85.2%、非被爆者で75%と被爆者で多かった(p=0.319)。ARSが出現した被爆者は、ARSを認めなかった被爆者よりも高い頻度でCHを有していた(90% vs 81%、p=0.333)。原爆被爆者は、非被爆者よりもバリアント数が多かった(6.93 vs 5.45, p=0.351)。ARS陽性者と陰性者のSNV数には統計的に有意な差はなかったが(6.73 vs 6.25, p=0.773)、ARS陽性者のINDEL数は統計的に有意に多かった(0.63 vs 0.25, p=0.037)。CHIP関連遺伝子変異を有する症例は、非被爆者と原爆被爆者の間で差がなかったが(20% vs 23%、p=1.0)、ARS陽性者ではINDELが比較的少なかった。原爆被爆者では、DTA(DNMT3A、TET2、ASXL1)変異の頻度が高かった。原爆被爆者は、非被爆者に比べて末梢血中のクローンのサイズ(VAF)が大きく(6.72% vs 5.68%、p=0.010)、特にCHIP関連遺伝子変異がない場合著明であった(6.56% vs 4.76%、p=4.73e-06)。被爆者がARSを経験し、CHIP関連遺伝子変異がない場合、CNAの頻度が高かった(19% vs 8%、p=0.286)。 これらの結果は、原爆放射線によるDNAおよび造血への長期にわたる損傷を示唆していると考えられる。
|