研究課題
本研究は本態性血小板血症(ET)および原発性骨髄線維症(PMF)において高頻度にみられるCALR変異のトランスジェニック(TG)マウスを用いて、①ETとPMFにおけるエピゲノム異常の役割、② ETとPMFの白血病への急性転化に対するエピゲノム異常の役割を明らかにするものである。我々はETを発症するCALR変異マウスと血球細胞特異的EZH2欠損マウスを交配し、CALR変異/EZH2欠損マウスを作成し、表現型の解析を行った。CALR変異マウス、CALR変異/EZH2欠損マウスは早期よりETの発症を認めたが、いずれも脾腫、骨髄や脾臓の線維化、白血病の自然発症を認めず、生命予後にも差を認めなかった。次に、CALR変異におけるEZH2変異の造血幹細胞に及ぼす役割を解析するため、競合移植を行い長期観察を行った。約1年間の観察では、CALR変異LSK、CALR変異/EZH2欠損LSKを移植したマウスの血球数は野生型マウスと同等で、ETの発症も認めなかった。骨髄のキメリズム解析では、CALR変異LSKを移植したマウスでは野生型LSK移植マウスと比べキメリズムが上昇しており、CALR変異の造血幹細胞の増殖能が高いことが示された。CALR変異/EZH2欠損LSK移植マウスは、CALR変異LSK移植マウスと同等のキメリズムであり、差は認められなかった。JAK2変異/EZH2欠損マウスでは、EZH2欠損により骨髄線維化の進展に関与するHmga2を含むPRC2標的遺伝子の活性化がもたらされ、MFの発症が促進され、生存が短縮される(Sashida et al. JEM 2016)。我々は今回、CALR変異に対してEZH2欠損が生じてもMFへの進展が誘導されないことや、幹細胞の分化能に影響を与えないことを示し、ドライバー遺伝子の種類によって、EZH2欠損の与える影響は異なることを明らかにした。
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