研究課題
成人T細胞白血病・リンパ腫(ATL)のゲノム異常に関する報告が日本およびアメリカの研究グループより相次いでなされ、地域により遺伝子変異のプロファイルが大きく異なることが報告されている。申請者はATLにおける遺伝子変異の地域差にHTLV-1のtax遺伝子型(ウイルスタイプ)が関わっているとの仮説を立て、検証を行った。現在までに、ターゲットシーケンス解析の結果から、沖縄県におけるATLは複数の遺伝子において変異の頻度が日本本土およびアメリカで行われた過去の研究と異なることが示唆された。その中でも特にGATA3およびRHOA遺伝子の変異は、沖縄県に多いtaxA遺伝子型の症例に多く、これらの遺伝子変異の地域間での頻度の差はHTLV-1のウイルスタイプの違いに起因する可能性が示唆された。一方で、PRKCB、PLCG1、CARD11といったT cell receptor (TCR)/NF-κB経路の遺伝子変異は、本土の症例と同様に高頻度に検出された。これらの変異はアメリカでは低頻度であったことが報告されており、日本人とアメリカ人のATL患者ではTCR/NF-κB経路の重要性が異なる可能性を示唆している。またSNPアレイの結果より、taxA遺伝子型の患者において、RHOA遺伝子のコピー数の増加も多く検出されており、ウイルスタイプの違いが遺伝子の異常に寄与する可能性を強めている。現在、ターゲットシーケンス解析結果とSNPアレイの結果とを統合した解析や、遺伝子異常と予後との関連を解析中である。
2: おおむね順調に進展している
沖縄県におけるATLの遺伝子変異プロファイルを明らかにし、一部の遺伝子異常とHTLV-1のウイルスタイプとの関連を示唆する結果が得られた。
現在、遺伝子変異プロファイルとSNPアレイの結果を統合した解析と、ゲノム異常と予後との関連について解析を進めている。本解析が終わり、ATLの病態形成に関与する重要な遺伝子異常が明らかになった場合、より詳細な解析を実施する。
ターゲットシーケンス解析データとtax遺伝子型を絡めたデータ解析および追加検体、臨床情報の収集、SNPアレイデータの解析などに時間を割いたため予定した使用額を下回った。次年度は追加検体の解析や注目する遺伝子のより詳細な解析を実施する。
すべて 2019
すべて 学会発表 (1件)