研究課題
近年、造血器悪性腫瘍に対する新規抗癌剤及び同種造血幹細胞移植(HSCT)の進歩により、治療成績は向上している。しかしながら、治療が強度になれば骨髄抑制はより高度となり、敗血症等の重篤な感染症を発症しやすくなる。また、強力抗癌剤治療によって、多量の腫瘍細胞が短時間に崩壊することにより多臓器不全を呈する腫瘍崩壊症候群(TLS, tumor lysis syndrome)も問題となる。敗血症やTLSに併発する急性呼吸窮迫症候群(ARDS, acute respiratory distress syndrome)は、肺胞・毛細血管関門に生じる炎症性傷害により肺血管透過性亢進型の非心原性肺水腫を呈し、重篤な呼吸不全に至り、予後は不良である。ARDSの分子機序は未だ不明な点が多く、治療は確立されていない。ARDSの病態には、病原微生物由来の外因物質、死細胞や組織傷害により発生する成分やサイトカイン等によって誘導される肺血管内皮障害が重要な役割を担う。また、肺内皮障害が起因となる凝固・線溶調節機構の破綻もARDSの病態・進展に関与する。我々は受容体型チロシンキナーゼTAM(Tyro3, Axl, Mer)であるMerの選択的阻害剤が、lipopolysaccharide (LPS) 吸入で作成されたARDSマウスモデルの気管支肺胞洗浄液(BALF)の好中球及びマクロファー増加を抑制し、高度な肺障害を改善される興味深い結果を得た。本研究では、ARDSの病態における肺内皮障害、高サイトカイン血症、活性酸素種産生増加が関与するARDSの分子機序に、Gas6-Merシグナルが寄与することを明らかし、Gas6-MerシグナルがARDSの新規治療候補となることを証明する。
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Sci Signal.
巻: 15 ページ: 724