研究課題/領域番号 |
19K17841
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
森田 薫 自治医科大学, 医学部, 助教 (20813223)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 慢性GVHD / 同種抗原/MHCクラスII複合体 |
研究実績の概要 |
本研究では、慢性GVHDの治療法開発を最終目標として、女性ドナーから男性レシピエントへの移植における強力な発症リスク因子の同種抗体(H-Y抗体)に焦点を当て、H-Y抗原の発現機構の解明を目標としている。H-Y抗原は、Y染色体由来の細胞内タンパク質であり、健常人では精巣で主に産生されており、慢性GVHDにおけるH-Y抗原の発現機構・発現部位は今まで明らかとなっていない。 昨年度はH-Y抗原が単独では細胞膜上に発現せず、MHCクラスIIと複合体を形成することで細胞膜上に提示されることをin vitroの系で証明した。この際、H-Y抗原はペプチドに分解された状態ではなく全長のままでMHCクラスIIと複合体を形成することも明らかにした。 当該年度は初めに、慢性GVHDを発症した患者がH-Y抗原/MHCクラスII複合体に対する抗体を有するかどうか解析を行った。 その結果、移植後早期の時点でH-Y抗原/MHCクラスII複合体に対する抗体を血漿中に有する場合、その後の慢性GVHDの累積発症率が有意に高くなることが明らかとなった。次にH-Y抗原/MHCクラスII複合体が慢性GVHD患者の炎症組織で実際に発現しているかどうか免疫染色にて解析を行ったところ、患者の病変組織でH-Y抗原/MHCクラスII複合体が特異的に形成されていることがPLA法等の解析にてよって明らかとなった。以上より、慢性GVHDの発症誘因であるH-Y抗体は、MHCクラスIIと複合体を形成したH-Y抗原を標的にしていることが明らかとなった。この結果は、今後H-Y抗体の産生制御を考える上で重要な糸口と考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究により、細胞内タンパク質であるH-Y抗原がMHCクラスIIと複合体を形成して、細胞膜上に発現することがあきらかとなり、さらに精巣外でも発現することが明らかとなってきた。また、慢性GVHDの発症誘因であるH-Y抗体が、MHCクラスIIと複合体を形成したH-Y抗原を認識する抗体であることもin vitro/in vivoの系両方で証明することができ、計画通り順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
H-Y抗原は健常人では精巣が主な発現部位であるが、慢性GVHDにおいては炎症組織でも発現することがこれまでの研究で明らかになってきた。今後は、H-Y抗原がどのように発現誘導されるかについてサイトメガウイルス、炎症サイトカインなどに慢性GVHDの病態機序に関与する因子に注目し、解析を行っていく予定である。
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