本年度の主要目的は、APOBEC3が胚中心B細胞に高発現していること、本研究で使用したFLAGタグをAPOBEC3のN末端に挿入したマウス(FLAGノックインマウス)の存在を国内外に報告することである。また前年度から行なっていた造血幹細胞から前駆細胞(骨髄球系やリンパ球系)への分化段階に関して、継続してフローサイトメトリーの解析も実施した。 まずAPOBEC3が胚中心B細胞に高発現したことを示す論文を、2022年4月にVirusesに掲載し、その後2022年12月の日本免疫学会でポスター発表を行った。 FLAGノックインマウスの骨髄及び胸腺を用いて、骨髄球系前駆細胞やリンパ球系前駆細胞のFLAGーAPOBEC3(FLAGーAP3)発現量をフローサイトメトリーで解析した。胸腺細胞はCD8陰性CD4陰性分画に発現の差が認められた。CD8陽性CD4陰性分画では引き続き、FLAGーAP3の発現量に差はあったが、CD8陰性CD4陽性分画ではこの発現の差はなくなった。その後、CD8陰性CD4陰性分画の細胞に関して、CD25とCD44でさらに解析したところ、CD44陽性細胞分画においてCD25が陰性から陽性に分化した時にFLAGーAP3の発現量に差が出始めた。さらに骨髄細胞をcーKit、Scaー1で分画したところ、FLAGーAP3発現量の差は乏しかった。CD43とB220で分画すると、FLAGーAP3の発現量に差が出始めた。 これらのことから、T細胞は分化が進むほどAPOBEC3の発現は減っていく傾向にあり、B細胞はpre pro-B細胞の段階から徐々にAPOBEC3の発現量は増加する。骨髄・胸腺・脾臓でのAPOBEC3の役割や発現量の差による生体への影響など、さらに近畿大学免疫学教室が得意とするレトロウイルス感染によってFLAGーAP3の発現がどう変化するのか、今後の研究課題である。
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