研究課題
メトトレキサート関連リンパ増殖性疾患(MTX-LPD)は、関節リウマチなどの自己免疫疾患の治療薬であるメトトレキサート(MTX)を投与中の患者に発生するリンパ増殖性疾患である。MTX-LPDの病理組織像は、リンパ腫、反応性過形成、境界領域病変が含まれ、特にリンパ腫が臨床上大きな問題となる。MTX-LPDの特徴の一つとして、MTXの投与中止のみで自然消退する症例が存在するが、その機序は解明されていない。この研究では、がん研有明病院などで診断されたMTX-LPD患者68例を対象に、エクソームシーケンス、RNAシーケンス、全ゲノムバイサルファイトシーケンスを行い、遺伝子の網羅的な解析を行った。さらに、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)と診断された40例を、化学療法が必要だった群とMTX中止のみで改善した群に分けて比較解析を行った。その結果、化学療法が必要だった群では、DLBCLを細分類する特徴的な遺伝子の変化が認められた。これは、MTX-LPDの中でも、特に化学療法が必要となる症例には、特徴的な遺伝子の変化が関与している可能性を示唆している。さらに、これらの特徴的な遺伝子の変化をホルマリン固定パラフィン包埋切片(FFPE)症例、22例を追加して、検証した。本研究は、MTX-LPDの遺伝学的特徴を明らかにし、自然消退の機序解明に向けた重要な一歩である。また、化学療法が必要となる症例に特徴的な遺伝子の変化を同定したことで、治療方針の決定に直接結びつく可能性がある。この研究成果は、2024年度の日本血液学会での発表を予定しており、MTX-LPDの診療に新たな知見をもたらすものと期待される。
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