研究課題/領域番号 |
19K17848
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研究機関 | 東京都立駒込病院(臨床研究室) |
研究代表者 |
遠矢 嵩 東京都立駒込病院(臨床研究室), 血液内科, 医員 (40732805)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | クローン造血 / 同種造血幹細胞移植 |
研究実績の概要 |
同種造血幹細胞移植後10年以上無再発生存を保っている83例について、末梢血から抽出したDNAを用いて標的シーケンスを行った。33.7%に37の遺伝子変異を認め、健常人におけるクローン造血(CH)に比べ高率に検出された(健常人では65歳以上でも10%程度)。変異遺伝子はDNMT3Aが最多で、CHの27.0%を占めた。ドナー・患者年齢の高低で4群に分けたところ、共に高齢の群で有意にCHの頻度が高く、CHの発生にはドナー・患者両者の年齢が重要と考えられた。CHの有無と各臨床因子について多変量解析を行ったところ、検体採取時のドナー年齢が高いことと、慢性骨髄性白血病がCHの存在と相関がみられた。CHの有無と検体採取時の血算に明らかな相関はなかった。CHの有無とGVHD発症歴に相関なかったが、extensive typeの慢性GVHD症例にDNMT3A変異が多い傾向があった(p=0.065)。CHが検出されたうち12例について移植28日後の骨髄でも変異解析を行った。移植後10年以降に見られた17のCHのうち28日時点でも検出されたのは4症例の4つで、これらはドナーから伝播したと考えられた。28日時点でCHが見つかった4例は見つからなかった8例に比べて10年以降のRDWが有意に高かった(他の血算に差は見られなかった)。また、day28 CHの有無は好中球や血小板の生着時期と相関はなく、少数例の比較ではあるがドナーのCHが生着に極端に不利にはならないと考えられた。 また、移植後無再発生存しているにも関わらず性染色体欠失を生じた4例について標的シーケンスを行ったところ3例に遺伝子変異を認め、クローン造血と染色体異常の関連性が示唆された。 上記のように、造血幹細胞移植後長期生存者においてクローン造血は高頻度に見られる現象であり、またドナー・患者双方の因子とも関連があることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
80例以上とこれまでにない多数例の移植後長期生存例について次世代シーケンスを行い、実際にCHが高頻度に生じていることを示した。また、CHが生じやすい臨床因子について明らかにした。また、移植直後と10年以上経過後の経時的変化についても解析を行った。これらの研究成果については既に学会発表を行った他、今後論文発表を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
CHについては遺伝子変異だけでなく染色体モザイクについても知られており、両者を包括的に解析する目的で標的シーケンスのデータから染色体モザイクを検出する系を構築中である。また、移植後CHの発生を前方視的に観察する臨床研究を準備中であり、CH発生時期の評価や臨床的アウトカムとの関連性を検討する方針である。
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次年度使用額が生じた理由 |
必要額を使用した際に生じた余剰分。次年度分と併せて必要物品の購入に充てる。
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