骨髄移植のマウスモデルを用いた検討により、移植片対宿主病(GVHD)の発症するallogeneicマウスにおいて移植後21日目にLgr5陽性幹細胞が門脈周囲および胆管周囲に出現することが確認された。また、T細胞のレポーターマウスを用いた移植実験により、Lgr5陽性幹細胞の出現部位はT細胞の浸潤部位近傍に局在していることが判明し、GVHDによる胆管細胞傷害によりLgr5陽性幹細胞の発現が誘導されるものと考えられた。移植後28日目ではallogeneicマウスにおいてT細胞などの炎症細胞浸潤は依然として認められたが、Lgr5陽性幹細胞は減少傾向となっていた。一方で、同時期のallogeneicマウスにおいてはサイトケラチン19陽性の胆管上皮細胞が増加し胆管新生が認められた。以上の結果から、肝臓GVHDにおいては胆管上皮の傷害が生じ、傷害部位近傍にLgr5陽性幹細胞が出現し、胆管上皮の再生に寄与しているものと考えられた。 移植後のallogeneicマウスに、移植後14日目からWnt/βカテニンシグナル伝達系の活性化因子であるR-spondin1の投与を行ったところ、コントロール群と比較してサイトケラチン19陽性細胞が増加し、正常な管腔構造を有する小胆管も増加している所見が得られた。この結果より、R-spondin1投与によりGVHDによる胆管上皮傷害後の胆管再生が促されている可能性が考えられた。 これらの現象の機序を検討するため、現在は肝臓オルガノイドを用いたex vivoでの検討を行っている。今後は肝臓オルガノイドと移植後マウスのT細胞の共培養の系を用いて、同種反応性T細胞により肝臓オルガノイド細胞の胆管上皮細胞への分化促進を検討する。また、その際のオルガノイド細胞を用いた遺伝子発現の解析により、同種反応性T細胞による傷害によりどのような変化が生じるかについて検討したい。
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