研究課題/領域番号 |
19K17850
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
塚本 祥吉 千葉大学, 医学部附属病院, 特任助教 (00814617)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | VEGF / POEMS症候群 / 血小板 / 骨髄間質細胞 / RNAシークエンス |
研究実績の概要 |
POEMS症候群(クロウ・深瀬症候群、高月病)は骨髄モノクローナル形質細胞の存在を基盤に、多発神経炎、臓器腫大、M蛋白、血小板増多など多彩な症状、検査所見を呈する難治性の全身性疾患である。本疾患は稀少疾患のため未だその病態解明には至っておらず、疾患特異的なVEGFの産生細胞同定に基づく病態解明、新規治療法の導入が待たれる。本研究ではVEGFを含めてさまざまなサイトカインを産生、蓄積し得る細胞として血小板、巨核球、骨髄間質細胞に着目し、POEMS症候群におけるその役割を明らかにすることを目的とした。血小板は元来核を持たない細胞であり、血小板中に含まれる全RNA量は細胞中の含まれる20 pg/cellに比べて極めて少ない。しかし、血小板内に発現しているRNAは、骨髄中の巨核球の血小板への分化、血中に循環する間に起こる血小板内でのスプライシングなど、長い複雑な過程を反映しており、近年さまざまな腫瘍によって影響を受けた血小板の遺伝子発現解析の結果が報告されている。また骨髄間質細胞はPOEMS症候群と同じ形質細胞性腫瘍である多発性骨髄腫や意義不明の単クローン性ガンマグロブリン血症(MGUS)では腫瘍の進展や治療抵抗性に深く関わっていることが報告されている。以上を背景として、POEMS症候群患者血小板および骨髄間質細胞の網羅的遺伝子発現解析を計画した。 2019年度は新規POEMS症候群患者より血小板および骨髄間質細胞を10検体ほど確保し、網羅的遺伝子発現解析に先立ちVEGF mRNAの発現解析を施行。2020年度は骨髄間質細胞のRNAシークエンスを施行し、2021年度はその解析を行い現在も継続中である。今後は血小板のRNAシークエンスならびに血小板前駆細胞である骨髄巨核球のVEGF発現を明らかにするために骨髄検体のVEGF mRNA in situ hybridization染色を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度はPOEMS症候群6例および健常者コントロール6例から血小板を抽出し、網羅的遺伝子発現解析に先立ちVEGF mRNAのRT-PCRを施行した。結果、健常者血小板ではVEGF発現が全例で認められなかったのに対し、POEMS症候群では6例中5例でVEGFの遺伝子発現を認めた。2020年度はPOEMS症候群患者9例および多発性骨髄腫患者3例の骨髄細胞よりin vitroで培養、純化した骨髄間質細胞におけるRNAシークエンスを施行した。2021年度にその結果を解析し現在も解析を継続中であるが、これまでに判明している結果としてPOEMS症候群骨髄間質細胞は多発性骨髄腫骨髄間質細胞に比べてVEGF mRNAの有意な発現上昇は認められず、今後多数例での解析ならびに正常コントロール骨髄間質細胞との比較検討が必要と考えられた。また、2020-2021年度に予定していた骨髄巨核球のVEGF mRNA in situ hybridization染色に難渋しており当初の予定よりもやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
①血小板、骨髄間質細胞ともに引き続き多数例の検体収集を進めるとともに、解析を継続する。 ②骨髄巨核球のVEGF mRNA in situ hybridization染色の方法を確立し、POEMS症候群症例において検討を行う。
POEMS症候群は稀少疾患かつ緩徐進行性の疾患であるため、COVID-19の影響により研究計画時の想定に比べて検体収集が遅延している。さらに1年の検体収集期間の延長により研究完了に十分な検体数を確保できるものと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
3年間で研究が終了しなかったため次年度に繰り越しを行った。
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