本研究は、POEMS症候群において疾患特異的に高値を示す血清VEGFやさまざまなサイトカインを産生、蓄積し得る細胞として血小板、巨核球、骨髄間質細胞に着目し、POEMS症候群におけるその役割を明らかにすることを目的とした。 2019年度は新規POEMS症候群患者より血小板および骨髄間質細胞を10検体ほど確保し、網羅的遺伝子発現解析に先立ちVEGF mRNAの発現解析を施行。2020年度は骨髄間質細胞のRNAシークエンスを施行し、2021年度はその解析を行った。結果として、POEMS症候群患者骨髄細胞より培養したin vitroの間質細胞(n=9)は多発性骨髄腫患者骨髄由来のin vitro 間質細胞(n=3)と比較してVEGF mRNA発現に有意差を認めず、POEMS症候群におけるVEGF産生細胞は骨髄間質細胞ではないことが示唆された。一方で、骨髄間質細胞のRNAシークエンスの結果、POEMS症候群骨髄間質細胞(n=9)は多発性骨髄腫骨髄間質細胞(n=2)に比べ、Gene Ontology解析において複数のimmune responseに関連する遺伝子群、ossificationやosteoblast differentiationに関連する遺伝子群の発現上昇が見られた。 2022年度はPOEMS症候群患者血小板と血小板前駆細胞である骨髄巨核球の解析を行った。POEMS症候群患者血小板(n=18)中に含まれるVEGFタンパク量は健常者血小板(n=6)に比べ有意に高値であることが示され、また少数例での検討ではあるが、POEMS症候群患者骨髄検体のVEGF mRNA in situ hybridization染色において巨核球中にVEGF mRNA発現が上昇していることが示唆された。今後の研究においてさらに多数例での検討を予定している。
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