研究実績の概要 |
急性骨髄性白血病(AML)や急性リンパ性白血病(ALL)およびその前病変とも言うべき骨髄増殖性腫瘍(MPN)の発症と進展には、共通してFLT3-ITD, JAK2V617FおよびBCR/ABL等の恒常的活性化チロシンキナーゼ変異体による増殖シグナルの異常活性化が主要な役割を果たす。中でもAMLの約3割を占める、FLT3-ITD変異は、予後不良因子として知られるが、近年上市されたFLT3阻害薬単剤治療ではその疾患制御は困難であり、病態生理の解明は喫緊の課題である。申請者はこれまで、FLT3-ITD陽性細胞で、Akt阻害薬やPI3K阻害薬などの分子標的薬への治療抵抗性がSTAT5の活性化に起因することを見出し、続いて、Pimキナーゼがその実行分子であることを解明し、これらの分子が腫瘍の発症・進展のみならず治療抵抗性をも担うことを報告した。さらに、本研究ではFLT3の分解過程に着目し研究を展開した。 本年度、プロテアソーム阻害薬であるボルテゾミブやカーフィルゾミブが、FLT3-ITD陽性AML ではREDD1の発現亢進によりmTORC1経路抑制効果を示し、STAT5およびPimの抑制によりMcl-1の抑制を介してアポトーシスを誘導することを見出し報告した(Nogami A. et al., Transl Oncol, 2019)。さらに、WP1130等の脱ユビキチン化酵素阻害薬処理を施したFLT3-ITD陽性AMLでは、USP9Xの抑制により、FLT3分子がK63を介してポリユビキチン化を受けてaggresomeへ移行することを確認した。その結果、下流のシグナル活性化阻害、酸化ストレス誘導性のp38・JNK活性化、およびDNA損傷シグナル活性化が生じ、相乗的にアポトーシスが誘導される事を見出し報告した(Akiyama H. et al. Cancer Lett, 2109)。
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