研究課題
T細胞急性リンパ芽球性白血病(T acute lymphoblastic leukemia: T-ALL)/ T細胞リンパ芽球性リンパ腫(T lymphoblastic lymphoma: T-LBL)において,多剤 併用化学療法や同種造血幹細胞移植の治療に反応しない難治例や再発・再燃例では予後は極めて不良であり, T-ALL/T-LBL(以下T-ALL)に対する新規治療法の 開発が臨床上の重要課題である.間葉系幹細胞由来細胞外小胞(mesenchymal stem/stromal cell-derived extracellular vesicle: MSC-EV)の持つT細胞抑制効果に着目し,難治性血液疾患であるT-ALLに対して,体外投与したMSC-EVの治療効果を示す可能性を考えた.多数株・多系統の細胞株にMSC-EVを添加したところ,T-ALL細胞株で特異的に増殖抑制効果を認めた.さらにこの抑制効果は, 骨髄MSC由来EV(bone marrow MSC-derived EV: BM-MSC-EV)に比して,胎児付属物由来間葉系幹細胞が分泌するEVで高かった.現在MSCを応用した細胞治療がいくつかの疾患を対象として臨床展開されている.MSCのソースとしてアクセスとプロセッシングが容易な骨髄が最も利用されているが,骨髄採取は生体に侵襲を伴い(倫理的課題),非常に高価である(医療経済的課題). また,治療特性の不均一性や異所性の組織形成や腫瘍形成の懸念が払拭できない.胎児付属物由来間葉系幹細胞が分泌するEVを応用した治療はこれらの問題を包括的に低減する可能性がある
3: やや遅れている
施設異動により研究環境の整備に予想以上の時間を要したため当初の予定よりも遅れている.しかしながら、仮説を支持するデータが得らえており、今後の研究推進が期待できる.
今後は胎児付属物由来間葉系幹細胞由来EVとBM-MSC-EVの網羅的解析を行い,相違や特徴などを検討する.さらに細胞株で得られたデータがプライマリーの白血病患者検 体で妥当であるか検証する.また分子生物学的手法を用いて,抗腫瘍効果の分子基盤を明確にする.さらに,また白血病マウスを作成し,in vivoにおけるMSC-EVの効果を確認する.
施設異動により研究環境の整備に予想以上の時間を要したため,実際の計画よりも遅れため使用額が少なかった。今後の網羅的解析や動物実験に使用する予定である.
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