研究実績の概要 |
申請者はこれまで、CRISPR/CAS9遺伝子改変技術を独自に応用し、CRISPR全ゲノムスクリーニングを抗白血病薬と併用することで、その薬剤と協働してAML細胞死を誘導する遺伝子(synthetic lethal)、その薬剤に耐性を示す遺伝子(drug resistant)を見いだすことが出来ると考えた。ATRAはAPLの第一選択薬であるが、その分化誘導効果は PML-RARα遺伝子を有するAPL細胞に限られる。予備実験としてATRA存在下でCRISPR全ゲノムスクリーニングを行い、ATRAと協働してAML細胞の分化・細胞死を誘導する新規遺伝子として、HUSH(human silencing hub)複合体を構成する因子を同定した。 まず、HUSH 構成因子(Tasor, Mphosph8, Pphln1, Morc3)の各因子を欠損したヒトAML細胞 (MOLM-13,OCI- AML3)を CRISPR/Cas9 で樹立し、各因子の阻害がAML細胞分化に及ぼす影響を検討したところ、Morc3以外のHUSH構成因子(Tasor, Mphosph8, Pphln1)に関しては、その欠損がAML細胞死を誘導することが明らかではなかった。 そのため、ヒトーマウス細胞間の差異を考え、マウスAML細胞を用いて、同様の実験を行ったところ、こちらでもMorc3遺伝子のみが、ATRAと協働してAML細胞死を誘導することが示された。 ヒトーマウス間差異の検証などに期間を要したため本研究は未だ完了していないが、現在、Morc3遺伝子欠損がATRAと協働して細胞死を誘導するメカニズムの解明、PDX(patient derived xenograft)モデルを用いたin vivoでの検証を行なっている。
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